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一丁目一番地の管理人〈その28〉

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2012/04/07 (土) 15:52 ID:/dYMb/4M No.2214
圧村和夫を撲殺した犯人が遂に逮捕されました。事件発生から約8ヶ月経過しておりました。当
初有力容疑者とみなされていた竹内寅之助は何者かの夜襲を受けて大怪我をしました。竹内は犯
人の心当たりがあるようですが、警察にはそのことを告げませんでした。

立花管理官が指揮した土手の森殺人事件はこれでめでたく解決したのですが、警察庁の伍台参事
官が関心を持つ売春組織は依然としてその全貌が闇に包まれたままです。竹内と敦子が何らかの
秘密を握っていると伍台は考えているのですが、いかに伍台でも、殺人犯の疑いが消えた二人を
これ以上調べることはできません。またしても、伍台は真の悪を逃がしたのでしょうか・・。  

一方、竹内を襲った相手はどうやらヤミ金組織が放った手の者のようですが、これで、竹内と敦
子の逃避行は終わりになるのでしょうか、それとも新たな展開があるのでしょうか、相変わらず
ゆっくりと語り続けます。ご支援ください。

毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その
11)』の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。    

また、文中登場する人物、団体は全てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきま
す。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字
余脱字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるよう
にします。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した記事を読み直していただけると幸
いです。

  ・ 文末に修正記号がなければ、無修正です。
  ・ 文末に(2)とあれば、その記事に二回手を加えたことを示します。
  ・ 1779(1)、文頭にこの記号があれば、記事番号1779に一回修正を加えたことを示します。
                                      
                                      ジロー


[2] 一丁目一番地の管理人〈393〉  鶴岡次郎 :2012/04/20 (金) 21:59 ID:5VeXEVI6 No.2216
帰 宅

警視庁から派遣されてきた刑事たちの事情聴取を竹内が受けた翌日、竹内を襲撃した犯人四人が
所轄署に自首して来ました。発生からわずか2日後、事件はスピード解決したのです。

自首した犯人たちの供述によりますと、一週間ほど前、彼らの内の一人が居酒屋で竹内といさか
いを起こし、店にいたお客たちの応援を得た竹内にいい様にあしらわれたのです。その場では多勢
に無勢で、さすがのやくざ男も黙って引き下がったのですが、竹内が店を出るのを待ち、彼の後
をつけアパートを確かめ、仲間を誘って竹内を襲ったと自白しました。この事実を飲み屋の従業
員の一人が証言しました。

飲み屋でのいさかいの報復行為にしては計画的で、手際のいい襲撃で、警察は最初から犯人たち
の言い分を信用していませんでしたが、飲み屋の従業員の証言が準備されていて、竹内本人も飲
み屋でのいさかいを認めましたので、それ以上の追求をしないで、犯人たちの供述どおりの内容
で送検しました。


実は警視庁のヒヤリングを受けた直後、竹内の病室に地元の弁護士が訪ねてきました。借金をす
て棒引きにする条件でヤミ金業者の名前を出さないよう要求したのです。竹内は黙って頷きま
した。その翌日、犯人たちが自首したのです。

加害者側にすれば、警察が捜査本部を立てるとは夢にも思っていなかったのです。被害者竹内に
は後暗いところがあるわけで、警察の取り調べに詳しいことを話すはずがないと読んでいました。
そして、的屋の親父が怪我をした程度の事件を警察が真剣に取りあげるはずがなく、事件は闇か
ら闇に葬り去られると加害者側は読んでいたのです。

ところが、事件発生後間を置かず、警視庁から刑事が出張って来たのです。慌てた所轄署は捜査
本部を立て、本格的な捜査を開始したのです。

一番慌てたのはヤミ金の関係者です。警察につつかれて、廃業に追い込まれでもしたら大損害で
す。それで、早い幕引きを狙って、竹内を買収する一方、実行犯の自首を早々と決行したのです。


ヤミ金関係者の狙い通り、竹内はヤミ金との関係を所轄署に何も話しませんでした。警察は自首
してきた4名を逮捕起訴して、その背後関係を探ることなく、事件の幕を引いたのです。


[3] 一丁目一番地の管理人〈394〉  鶴岡次郎 :2012/04/23 (月) 12:12 ID:0Cuj1U3A No.2217
世の中、何が幸いになるか本当に予想がつかないものです、土手の森組員殺人事件の捜査で警視
庁が出張ってきたおかげで、竹内襲撃事件は地元で注目されることになり、異例の速さで捜査本
部が立ち上がったのです。そして、慌てたヤミ金業者は犯人を自首させて事件の早い幕引きを実
行したのです。結果として、痛い思いはしましたが、竹内は晴れて自由の身になれたのです。

二週間ほど入院して、退院を明日に控えて、全身の包帯が取れた竹内はすっかり元気になってい
ました。毎日見舞いに来ている敦子はいつものように今日も顔を出し、顔なじみになったナース
達に愛想良く挨拶をして病室へ入りました。

「鯛焼き屋の君江姐さん・・、昨日、お見舞いに来てくれたのだったね・・・、
16日から始まる元町のお祭りでは元気な姿を見ることが出来るネ・・て、
すごく、喜んでいた・・」

今流行のアイラインを強調したメイク、思い切りよくカットされた胸のV字からFカップの乳房
があふれ出て、圧倒的なヒップラインを余すところなく強調している肌に密着したピンクのパン
ツ、どこから見ても、すっかり的屋の姐さんが板に付いた感じの敦子が嬉しそうに告げました。
もうとっくに30歳を過ぎているのですが、どう見ても20歳代に見える敦子です。

「敦子・・、少し話がある・・・」

竹内がベッドの上に身体を起こし、改まった表情で敦子を見つめました。敦子の表情から笑みが
消えていました。竹内が何を言い出すか敦子には予想できているようです。

「お前には散々苦労させて辛い思いをさせた。
痛い思いをしたが、おかげで、晴れて自由の身になれた。
これで安心だ・・・。

もし・・、お前が一緒に居てくれなかったら、
俺は・・、とっくにこの世から消えていただろう・・。
改めてお礼を言いたい・・・」

竹内が深々と頭を下げています。敦子がもう涙を浮かべています。

「寝ていていろいろ考えたのだが・・・、
ここらが潮時だと思う・・。、

お前は東京に帰ってくれ・・・」

「・・・・・・・」

「いまさら俺と別れても、朝森さんとの仲が戻るとは思えないが、
お前はまだ若い・・・、
もう一度新しい人生に挑戦して欲しい・・」

「・・で、虎さんは、この先どうするの・・?」

「俺か・・・、
幸い、的屋仲間はこんな俺でも大切に扱ってくれている、
今の生活が本当に楽しい・・、
残された人生、この生活を楽しむことにする・・

お前と過ごした半年余りは、俺にとって、10年の生活に匹敵する充実したものだった・・。
出来ることなら・・・・」

竹内はここで口を閉じました。それ以上言葉を続けることに何も意味がないことに気が付いたの
です。

〈お前が嫌になって別れるのではない、
本音を言えば。何時までもお前と一緒に居たい気持が強い・・。
しかし、来年、俺は還暦を迎える、いままでのようにお前を満足させることはできなくなる日が
いつかは来ると思う・・、
そうなる前に、お前を手放したい・・、
棄てられる悲しみを味わいたくないのだ、いい思い出を残しておきたいのだ・・〉

竹内の本音はこんなところだったと思います。

「・・・・・・・」

ベッドの上に座った竹内はさばさばとした表情です。今にも泣き出しそうになりながら、敦子は
何も言わないで、じっと竹内を見つめています。そんな敦子を竹内は優しい瞳で見つめています。

二人はただ黙って見つめ会っていました。長いと言えば長く、過ぎてしまえば束の間の出来事に
思える半年あまりの逃避行を二人は思い出していました。緊張に明け暮れる日々の中で、狂った
ように絡みあった日々が二人の脳裏に鮮やかに蘇っていました。

明日の知れない身であるだけに、男と女は今日生きていることを確かめるように激しく抱き会い
ました。雑魚寝を基本とする的屋仲間の宿舎でも、二人の絡みは桁外れに過激で、みんなの注目
を集めました。

今は盛の敦子を竹内は眩しそうに見つめています。敦子が残ると言いだしても、もう、過ぎた日
のような熱い情熱を持って敦子を抱き続けることはできないだろうと、竹内は、改めて自身の老
いを感じ取っていたのです。


[4] 一丁目一番地の管理人〈395〉  鶴岡次郎 :2012/04/24 (火) 16:29 ID:32JccgU2 No.2218

「君江姐さんがね・・・・、
虎さんを譲る気になったら、
いつでも、喜んで虎さんの面倒を見てもいいと言っていた・・・。
彼女、虎さんが好きなのよ・・」

鯛焼き屋の屋台を守っている君江は、50歳過ぎの未亡人で、40歳前に見えるほど若々しく、
かみそりのように切れ味のある、シャープな感じの美人です。二年前、ヤクザ組織に身を置いて
いた夫を仲間内の抗争で亡くして以来、決まった男はいないのです。

竹内と敦子の事情を全て知っていて、昨夜、竹内を見舞いに来た時、君江が竹内にこんなアドバ
イスしていたのです。

「今まで二人は、外界の動きに眼を閉じて、力を合わせて必死で暮してきた・・。
今回の事件で、二人が世間から隠れ暮す理由は消えたわけだから、
虎さんは勿論だけど、敦子さんは自由に羽ばたくことになる。

そうなると、いままで平穏だった二人の間に漣が立つことになる。
判りきったことだけど、虎さんと敦子ちゃんは二周り近く離れている・・。
虎さんは自身のことを若いと思っているから、この歳の差に実感がないと思うけれど、若い敦子
さんにはいろいろな誘惑が迫ることになる・・。

現実問題として、若い敦子さんを今までと同じ様に、虎さんの側に閉じ込めておくことは出来な
くなる。どんなに敦子さんが良い人でも、虎さんに対して今と同じ精神状態を保つことは難しい
と・・、私は思う・・。

一度、敦子さんを朝森さんの手元に戻しなさい。
その上で、改めて敦子さんが虎さんを、再び選ぶなら、私は何も言わない。

このままズルズルと生活を続けていたら、虎さんが60歳を過ぎて落ち目になった時、見限ら
れて、棄てられることだってあり得るのよ・・・。
未だお互いに未練が残っている間に、綺麗に別れる方が良い・・」

この言葉に竹内はハッと感じたようです。竹内ほどの人物でも、それまで自身の犯した罪の大き
さに気付いていなかったのです。若い敦子の人生を無理やり折り曲げていたことに、いまさらの
ように気が付いたのです。

一方敦子は、最初の頃は、竹内の逃避行に同行したことを後悔する時もあったのですが、最近で
はすっかり的屋の世界に溶け込み、竹内とこの世界で暮らし続けることに何も抵抗を感じなく
なっていたのです。

それでも敦子は朝森が離婚届を出していないことを知っていました。二度ほど市役所に問い合わ
せてその事実を確認していたのです。竹内の提案を聞いた時、敦子は自身の胸の内を覗き込む気
持ちになっていました。

喜んで朝森が敦子を迎えてくれるはずがないと思いながら、〈東京へ帰る・・〉そう思うだけで、
胸のときめきを感じていたのです。

〈私は・・、健次郎さんのことをまだ忘れ切れないでいる・・〉、

敦子は驚きで自身の反応を味わっていました。そして、朝森健次郎を愛している敦子自身を改め
て認識していたのです。敦子はここで思い切って、人生を掛ける気になっていたのです。

「未練が残るから、ここでお別れを言いたい、
次に会う時は、笑って過去を話し合えるようになっていると良いね・・・」

竹内はそう言いいながら、ベッドの側にある小机の引き出しから二通の封筒を取り出しました。


[5] 一丁目一番地の管理人〈396〉  鶴岡次郎 :2012/04/25 (水) 15:34 ID:kxRVycgk No.2219

「一通はお前達を脅した証拠の写真とそのメモリーが入っている・・、
お前を独占したい気持が強かったせいだが、何故こんな卑劣なまねをしたのかと、今となっては
恥ずかしい気持ちで一杯だ、この封筒の中には俺の一生で一番汚い部分が閉じ込められている。
お前の手で処分して欲しい・・・」

敦子は黙って、やや古びた封筒を受け取りました。勿論その中身は良く知っている様子です。

「もう一通は、二人へのお詫びとお礼の品が入っている。
東京へ復帰する日がいつかあるかと思い、苦労して隠し通した唯一の財産だ・・。

債権者から逃れるために、便宜上、朝森さん名義にしたのが飛んだところで役に立った。何も言
わないで受け取って欲しい、俺にはもう使い道のないものだから・・・、売るなり、そのまま使
用するなり、二人で相談して決めて欲しい・・・・」

封筒の中身の想像が出来たようで、敦子は直ぐにはそれを受け取ろうとしませんでした。笑みを
浮かべた竹内が受け取るよう促し、敦子が頭を下げてそれを受け取りました。


ここは泉の森荘のある町です。その日、いつもよりかなり早い時間、夜の8時過ぎ、朝森は疲れ
た身体を引きづるようにしてアパートに戻ってきました。敦子が家を出てから、もう一年近く
経っていました。敦子のいない生活にもすっかり慣れた朝森健次郎は、二人で暮していた一丁目
一番地にある泉の森荘で今も生活しています。二人の事情を知っている管理人夫妻は温かい目で
朝森を見守っているのです。

敦子が郵送してきた離婚届に記名捺印すれば離婚が成立することは判っているのですが、朝森は
その行為を一日伸ばしにしているのです。敦子が戻ってくると信じているわけではありません、
逆に最近は、敦子は戻ってこないと朝森はあきらめているのです。それでも、一度会って、彼女
の真意を聞くまでは、離婚できないと思っているのです。そして、仕事に埋没して、彼女のこと、
彼女と暮した生活のことを忘れようと努力しているのです。その結果、最近では離婚届の存在さ
え忘れるほどになっているのです。


その日、身体は疲れていても、全身に漲る達成感と満足感で、朝森は爽快な気分になっていまし
た。朝森健次郎の勤務する工場で、半年を要した大プロジェクトの設計が完了したのです。昨年
の末、抜擢されて設計課長に就任して以来、初めての大仕事で、朝森設計課長自らが陣頭指揮し
て来た大プロジェクトでした。

いつもなら、途中の居酒屋で一杯やりながら夕食を済ませるか、コンビニで弁当を調達してくる
のですが、設計が完了した興奮で、空腹感を感じることなく、真っ直ぐに自宅へ戻って来たので
す。


いつものように、鍵を入れ、ドアーを開けるといい匂いが空腹だった胃袋を刺激しました。咄嗟
に、他所の家へ入ったと朝森は慌てて廊下へ脱出しました。

外で表札を確かめています。そして、恐る恐るドアーをもう一度開いています・・。

そこに、一人の女性が笑みを浮かべて立っていました。ドアーの音を聞きつけてキッチンから玄
関に出てきたのです。

「敦子・・・・」

花柄のエプロン・・、敦子が残して家を出たまま一年近く、誰にも使用されず箪笥の奥に仕舞って
あったエプロンを着けた敦子が玄関に立っていたのです。


[6] 一丁目一番地の管理人〈397〉  鶴岡次郎 :2012/04/26 (木) 15:57 ID:ZxWy6BWo No.2220
ゆっくりと膝を折り、敦子は正座をして、頭を床に着けました。そして、その姿勢のまま頭を上
げないのです。

朝森が近づき、膝を折って覗き込むと、肩を震わせて彼女は泣いていました。朝森が肩に触れる
と、突然、顔を上げ、ものも言わず朝森に抱きつき、胸に顔を押し付けて泣いていました。ワイ
シャツの薄い布を通して敦子の涙が朝森の肌に染み通っていました。


敦子が準備していたお風呂にゆっくり浸かり、これまた敦子が準備した下着と部屋着を着込んだ
朝森がキッチンに行くと、敦子が心を込めて作ったチキンカレーと彩り豊かなサラダが食卓に並
んでいました。勿論、チキンカレーは朝森の大好物な品です。

良く冷えたビールを一息で飲み干し、朝森は大きく息を吐き出しました。そのタイミングを待って
いたように、敦子が椅子から立ち上がり、床に正坐して、ゆっくりと頭を下げました。搾り出す
ようにして、それでもはっきりとした言葉で敦子は言いだしました。

「私のしてきたことを考えると、とてもここへ顔を出すことは出来ないことは良く判っています。
許してくださいと申し上げることができないほど酷いことをしてきた女であることも良く判って
います。

せめて今夜一晩だけでも、お側にいることを許してください。
それも無理なら、一口だけでもこのカレーを食べてください。
それだけで結構です・・。
お食事の後・・・、私は黙って出て行きます・・」

それだけ言って、敦子は両手を床につけたまま、顔を上げて、じっと朝森を見上げました。

黙って敦子を見つめていた朝森が、スプーンを取り上げ、カレーをすくい上げ、ゆっくりと口へ
運びました。眼を閉じ、朝森はゆっくりと口を動かしています。彼の目から、一筋の涙が頬を伝
わっていました。

「美味しい・・・、
昔のままだ・・」

喉を鳴らしてカレーを飲み込んだ朝森が微笑を浮かべて言いました。

「多分知っているだろうが、離婚届は出していないよ・・。
僕は君をずっと待っていた・・。
今も君は僕の妻だ・・。

ここは敦子の家だ、誰に遠慮をする必要もない」

声を出して敦子は泣きだしました。床に両手を着いて、その上に頭をつけて敦子は泣いています。
朝森が立ち上がり、敦子を抱き上げるようにして、椅子に座らせました。

「どうして、そんなに優しいのですか・・・、
こんな酷いことをした女をどうして許すのですか・・」

はにかみながら、掌で涙を拭いながら、敦子が朝森を本気でなじっています。

「どうしてかな・・・、
多分、敦子を愛しているからだろう・・な、
敦子が居なくなってから、一度だって、憎いと思ったことはない・・
いつかここへ戻ってくると信じていた・・・・」

笑みを崩さないで、朝森がのんびりと答えています。

「本当にバカなんだから・・・、
今、私を追い出さないと、後になってきっと後悔するよ・・・、
明日の朝、私が嫌になっても、もう・・、その時は遅いからね・・」

顔をくしゃくしゃにして泣きながら、敦子が悪態をついています。ニコニコ笑いながら朝森がカ
レーを口に運んでいます。見る見る内に皿の底が見え始めています、凄い食欲です。


[7] 一丁目一番地の管理人〈398〉  鶴岡次郎 :2012/04/28 (土) 11:07 ID:NRhFlDng No.2223
二人だけのささやかな、しかし、この上ない豊かな夕餉の宴はゆっくりと進みました。食事の間、
上機嫌の朝森が、今日完成した大プロジェクトの設計内容を説明しました。敦子はただにこにこ
微笑みながら聞いています。仕事の話を始めると朝森は急に饒舌になるのです。話の内容はほと
んど判らないのですが、敦子は朝森から仕事の話を聞かされるのが昔から大好きでした。久しぶ
りに朝森の情熱的な説明を聞いて敦子は幸せいっぱいの気分になっていました。

「ああ・・、こんな話ばっかり、面白くないだろう・・、
言い忘れていたが去年の末、設計課長に昇進した・・」

「凄い・・・、
すると・・、私は課長夫人ってわけ・・・、夢のよう・・・・・」

最後の言葉を独り言のようにポツンと敦子が呟きました。

「頑張ったあなたに比べて、
私は世間の眼を恐れて逃げ回る毎日だった・・」

遠くを見る目つきをして敦子がつぶやいています。しばらく視線を泳がせていた後、意を決した
ように朝森を見つめました。その視線の強さに朝森がびっくりしています。

「もし、お許しいただけるなら、あなたには思い出したくもない、嫌な話でしょうが、
私のしてきたことを一通り聞いてください・・」

東京から消えた経緯を敦子は朝森に報告するつもりのようです。ビールグラスをテーブルに戻し、
朝森が笑みを残した表情で頷き、聞く姿勢を見せています。目の前の料理はほとんど食べつくさ
れています。

「ありがとうございます・・・。
あなたの前で口が裂けても言うべきではないことも、あえて申し上げることになると思います。
ただ、私にとっても、おそらくあなたにとっても、今後の生活を考えると無視できない大切な話
だと思いますので、すべて隠さずお話します。たぶん、耳障りな話が多いと思いますが、聞いて
ください。どうしても堪えられないようでしたら、そう言ってください、すぐに止めます」

慎重な前置きに朝森が苦笑を浮かべて頷いています。一応、自宅へ戻ることが許されたのは確か
ですが、その朝森の決断が、敦子が犯した全ての罪を認識した上でのことなのか、過去に眼を瞑
り、敦子の受け入れを決めたのか、敦子は不安なのです。全てを知った上で、それを全て飲み込
んだ上で受け入れて欲しい・・。敦子はそう考えているのです。敦子の告白を聞いた朝森があき
れ果て、決定的な別れの言葉を告げる可能性も高いのです。

どうやら朝森も敦子の気持ちを理解しているようで、耳を傾けているのです。

「ご存知のように、無理やりあなたとの仲を裂かれ、彼と一緒に暮らしはじめたのですから、
最初はぎこちない雰囲気でした・・。
それでも、男と女の関係は不思議なもので、一つベッドで過ごすようになると・・、
ああ・・、スミマセン、心ないことを言ってしまいました・・」

敦子が慌てて頭を下げています。苦笑を浮かべて朝森が手を横に振っています。

「彼と一緒に暮らし始めた数日は、必要最低限の会話しか存在しない仲でした。それでも彼は新
婚の夫そのものになり切って、私を大切に、優しく扱ってくれました。私も彼も、昼間は勤めに
出ていましたが、家に戻ると下にも置かないほど大切に扱ってくれ、お金もふんだんに使ってく
れました。こうして、10日も過ぎると、竹内さんの良いところが判り始め、次第に打ち解けて
きました」

この家へ戻ってきた時から覚悟を決めているのでしょう、敦子はすべてを告白するつもりのよう
で、滑らかな口調で話しています。


[8] 一丁目一番地の管理人〈399〉  鶴岡次郎 :2012/04/29 (日) 10:52 ID:TG6nkVw6 No.2224
「夜の生活も充実していたのだろう・・」

「ハイ・・、お察しのとおりです。昼間は喧嘩の絶えない夫婦が、夜は仲良く絡み合う、それで
夫婦の仲がかろうじて保たれている、そんな夫婦が世間では一杯居るそうですが、私達がまさに
そうした関係でした。

彼が密かに薬を使っているのを私は知っていました。新婚夫婦のように毎日、絡み会いました。
それも延々と何時間も、食事さえ忘れて・・・。

毎夜の絡みの後遺症で、彼より若い私でさえ、昼間、眠気を払うのに苦労しました。おそらく彼
も昼間の仕事に差しさわりが出ていたと思います。彼はそれほど頑張ってくれました。

女なんて弱いものです。何時しか、彼との生活に満足し始めていました・・」

「・・・・・・・」

辛い話であるはずですが朝森の表情は穏やかでした。何も質問しないで、ただ黙って敦子の話を
聞いていました。

いくら全てを話すと決めていても、ここまであからさまに情夫との生活を夫に告げる必要はない
ように思えますし、夫に何か含むところがあるにせよ、こんな話はすべきでないとの節度を敦子
は十分心得ているはずですが、敦子の説明振りを見ていると、そこには何か秘められた意図があ
るように思えます。

一方、朝森もあえて辛い話を聞く必要はないと思えるのですが、朝森の様子を見ていると、敦子
の話を聞くことが彼にとって、ある種の贖罪行為であるかのようにさえ見えるのです。

敦子が竹内の情婦になった経緯には、二人にしか判らない心の葛藤があった模様です。

「やがて、彼は私を正式に妻にしたいと言い出していました。私自身もあなたのところへ戻るこ
とはできないだろうと思い始めていました・・、あのまま、もう半年も過ぎれば、私たちは正式
の夫婦になるべく動き出していたと思います。

そんな時、あの土手の森殺人事件が起きたのです。そして、私が死体の第一発見者になりました。
それから間もなく、彼の会社が急速に傾き始め、追い討ちをかけるように銀行からの融資を引き
あげられて、ついには不渡りを出し、会社は倒産しました。後には、無理をして借りた高利の借
金だけが残りました・・・。そんな中で、彼は夜逃げを決意したのです。

倒産が決まった夜、竹内さんはあなたのところへ帰るように言いました・・」

ここまで話して敦子はビールのコップに手を伸ばし、一口飲みました。ここからが大切な話にな
ると思った敦子は一息ついた模様です。

「竹内さんから家へ帰るよう言い渡されたとき、正直迷いました。
それでも、私は彼に付いて行く道を選択しました。

正直に申します・・・。彼の体に溺れていたのは確かです。
献身的な彼の愛撫に理性を失い、彼のものになってもいいと思った時間があったことは確かです。

それでも、そんな淫らな欲望に引きずられて、彼にズルズルと付いて行ったのではありません、
このことだけはあなたに判ってほしいのです・・」

必死の表情で朝森を見つめています。朝森が黙って敦子を見つめています。そして、ゆっくりと
口を開きました。

「敦子の考えもっとよく理解するために、
ここで一つ質問しても良いかな・・・」

必死で語りかける敦子にあいまいな態度は見せられないと朝森は考えたようで、黙って聞き役に
徹していた態度を変える気になったのです。何を質問されるのかと、敦子が不安そうな表情を浮
かべ、それでもはっきりと頷いています。


[9] 一丁目一番地の管理人〈400〉  鶴岡次郎 :2012/04/30 (月) 11:23 ID:eGlKLPZw No.2225

「竹内さんとの約束では、半月毎に僕の所へ戻ることになっていたが・・、
一度も敦子は戻ってこなかった・・。

竹内さんが無理やり引きとめたにしても、敦子がその気になれば僕の所は来ることは出来たはず
で、僕の所へ来ないのは明らかに敦子の意志が働いていると思った。

敦子を引き止めることが出来なかった僕に比べて、竹内さんは全力を傾けて敦子獲得に走った。
これでは竹内さんの情熱と魅力に敦子が溺れてしまうのはいたしかたがないと、これも自業自得
だと、僕は諦めていた。下手に騒ぎ立てても、敦子を苦しめるだけだと思って、竹内さんには文
句一つ入れなかった・・。本来なら彼から何か連絡があるべきだと思っていたが、敦子の気持ち
を考えると動くことが出来なかった・・。このことで君の意見を聞きたい・・・」

「おっしゃるとおり、あなたの所へ戻らなかったのは私の意志で決めたことです。竹内さんはむ
しろあなたと交わした『男の約束』とやらを気にして、定期的に家に帰るよう言っていました。

竹内さんの通い妻になると決めた時、私はあなたの所へは中途半端な形では戻らないと決心して
いました。半月毎に、あなたと竹内さんの間を行ったりきたりする生活を私が了解したと、本当
に思ったのですか・・・?

もし、そうだとしたら、私はよほどバカで、甘い女に思われていたのですね・・。
私がこの家に戻るのは、竹内さんと正式に切れる時だと、最初から決めていました。

ご存知のように今まであなた一人を守り通して来たわけではありません、結婚してからでさえ、
相手にした男性の数は10指を超えます、そんな私ですが、半月毎に一緒に暮らす男を変えて、
平気で夫婦生活ができるほど、私は器用な女でも、神経の太い女でもないのです・・」

「そうか・・・、そうだったのか・・・
敦子はそんな決意で竹内さんの家へ行ったのか・・、想像もできなかった・・・」

大きなハンマーで打ちのめされた・・、朝森はそんな衝撃を受けていました。感嘆の言葉以外出
せないのです。


敦子を竹内に貸し与えると決めて、竹内も朝森も本気で敦子を共有する気になっていたのです。
敦子と竹内は互いにこれまで何度か肌を接した仲ですから、一緒に暮らすといってもそんなに大
きな抵抗はないだろうと二人の男は考えていたのです。しかし、それは男の間だけでしか通用し
ない考えだったと・・・。朝森は今、はっきりと理解していました。

男達の約束事を横目で見ながら、敦子は自ら招いた不祥事を自身の体で償う決意を固め、竹内の
情婦となる悲壮な覚悟を固めて竹内のマンションへ出向いたのです。

「あの時点で、僕と竹内さんは敦子を共有するつもりでいたけれど、敦子は僕と別れて、竹内さ
んのお嫁さんになるつもりで家を出たのだね、たとえ契約で抱かれることになっても、その相手
には操を立てたい、それが敦子の、女としての意気地だったのだね・・」

そこに愛情がなくても、契約で抱かれることになっていても、一旦、女がこの男と決めた相手に
は操を尽くす。敦子は女の本能でそう決めていたのです。途中で朝森のところへ戻ることなど、
最初から敦子の頭にはなかったのです。


[10] 一丁目一番地の管理人〈401〉  鶴岡次郎 :2012/05/03 (木) 15:03 ID:Tr58mvbw No.2226

たぶん朝森にしても、竹内にしても、敦子の意気地を完全に理解することはできないと思います。
それでも敦子の説明を聞き、朝森は自身の男本位の発想を恥じ入っていました。敦子の発想がよ
り人間らしいと判断する良識を朝森は持ち合わせていたのです。

「敦子にそんな高遠な考えがあるとは想像さえできなくて、僕は大きな誤解をしていたようだ。
嫌々、竹内さんと暮らしている様子を見せながら、実は彼の魅力に敦子が虜になったと思い込ん
でいた。それで、約束を破って、僕のところへ戻ってこないのだと嫉妬に狂っていた・・。

それでも、あっさり敦子をあきらめたわけではなかった。竹内さんへの熱い思いは、いずれ冷め
る時が来るはず、そうなれば、敦子はもう一度、僕を選ぶはずだと思って、待つことにした・・・。

しかし、まさか、夜逃げに同行するとは正直、思わなかった・・。
これで、敦子とは永久に別れることになると、覚悟を決めたほどだった・・・。

それでも、敦子が残した置手紙に、〈・・女の生きた証を残したい・・〉と書かれていたのを見
て、竹内さんに溺れただけが理由でなく、何か他に事情が有りそうだと判り、敦子が戻ってくる
僅かな希望の火を消さないことにしたのだが・・・」

「スミマセン・・、ちゃんとお話をして、許しを得るべきだったのです。
しかし、あなたに会えば、せっかく固めた気持ちが揺らぎそうで、
置手紙を書くのが精一杯でした・・」

敦子が頭を下げ、朝森が頷いています。


「追い詰められた竹内さんをここで見捨てたら、彼は死ぬかもしれないと思いました。
彼を救えるのは私しか居ないと思いました。

いい加減な生き方をしてきた私がそんな気になったのは、私自身、今でも良く判りませんが、彼
の側に居て、彼を助けることが、私の運命(さだめ)だと思いました。人として何か、生きた証
をこの世に残したかったのです。

あなたには申し訳ないと思いましたが、私が居なくなっても、あなたは一人で生きられるし、私
が居なくても別の輝かしい人生が待っていると確信していました。そして、彼には私しか居ない
と思ったのです」

ともすれば溢れる出る涙を抑えながら、敦子は必死で感情を抑えながら話していました。ここで
泣き出しては、せっかくの行為が女の感情論で片付けられるのを敦子は恐れていたのです。

人として生きることの意味を確かめるために竹内に同行したと、敦子は自身の行動を評価してい
るのです。汚い女の肉欲や、その場限りの薄っぺらい同情で行動したとは思って欲しくないと敦
子は考えているのです。少なくとも、朝森だけには自身の行動を正確に理解して欲しいと願って
いるのです。


「ヤミ金の追っ手から逃げることは想像以上に厳しいものでした。もし、途中で偶然出会った露
天商の仲間の手助けがなかったら、私達はとっくにつかまって、多分、私は売り飛ばされて、今
頃はどこかで身体を売る仕事をしていたと思います。

彼らは私達を匿ってくれるだけでなく、仕事も与えくれました。あの人たちには言葉では言いつ
くせないほどお世話になりました・・・」

アパートの管理人夫人である美津崎愛が、彼女の友達である鶴岡由美子に朝森敦子と竹内の逃避
行を話し、これを受けた由美子が由美子の愛人であり、的屋の大親分である宇田川 裕、通称U
さんに助けを求めました。Uが全国に回状を出して、竹内と敦子の保護を求めた経緯を朝森健次
郎は愛から聞いて知っているのです。

Uの回状が竹内と敦子を救ったのです。もし、Uの回状が発信されていなかったら・・、敦子が
言うとおり、敦子と再会することは出来なかったと朝森は確信していました。まだ会ったことも
ない由美子とUに朝森は心中で深々と頭を下げていました。ただ、朝森はこのことを敦子に告げ
るつもりはないようです。


[11] 一丁目一番地の管理人〈402〉  鶴岡次郎 :2012/05/05 (土) 18:13 ID:t./wY4r6 No.2227

「結局、私達の不注意が原因で、最期にはヤミ金の手に捕まりましたが、ここでも私達は幸運に
恵まれました。東京で起きた殺人事件のおかげで、竹内さんの傷害事件が大きく取り上げられま
した。もし竹内さんを襲撃した犯人がヤミ金業者の放った手のものだと判れば、ヤミ金業者は警
察から、そして社会から徹底的に追及されます。

警察の目から逃れるために、そして会社を守るため、名前を出さない代償として、借金を棒引き
する条件をヤミ金業者は密かに提示してきたのです。勿論、竹内さんは迷わずこの条件を受け入
れました。

これで、私達は晴れて、表に出られる身になったのです。逃げ隠れする必要がなくなった私達に
新たな転機が訪れました。

竹内さんは私と別れると言いました。彼は今までどおり露天商の仲間と一緒に暮すつもりのよう
です。もう、東京へも、昔の商売にも戻る気はないとも言っていました・・」

ここで敦子はバッグから二通の封筒を取り出し、その内の一通を朝森の前に差し出しました。

「竹内さんは、あなたに悪いことをしたと言って、心から詫びていました。
これは彼からあなたへの贖罪の気持だと言って渡されたものです・・。
中には、マンションの権利書が入っています。既にあなた名義になっています・・」

ヤミ金の目からマンションを隠すため、竹内は朝森にマンションを売却したことにして、所有者
名義を変更していたのです。勿論朝森は一円も売却代金を支払っていません。

不審そうな表情を浮かべ、封筒から権利書を取り出し、その内容を朝森がチェックしています。

「こんな高価なものを受け取ることは出来ないよ・・。
竹内さんだけが一方的に悪いと言えないのだから・・
僕だって、竹内さんが犯した罪の片棒を担いだことになるのだから・・・」

竹内と朝森夫妻はスイング仲間で、朝森の見ている前で何度も敦子は竹内に抱かれていたのです。
何度かそんな遊びを続ける中で、竹内は敦子に魅力に取り込まれ、彼女を独占したくなっていた
のです。

そんな気持を竹内が抱き始めた頃、あるホテルで竹内の顔見知りである大企業の重役が敦子と一
緒に居るところを竹内が目撃しました。敦子に並々でない興味を持つようになっていた竹内は、
探偵を雇って敦子とその重役の関係を調べさせたのです。

探偵の報告は竹内の予想を超えたものでした。敦子は高級売春組織の女で、その重役はその客で
あることが判ったのです。その事実を知った時、竹内は正直、敦子から手を引こうと思いました。
秘密組織の恐ろしさを竹内は良く知っていたのです。しかし、敦子の魅力に抗し切れなかった竹
内は、この事実を自身の欲望を遂げる道具に使ったのです。

「奥さんが高級コールガール組織に身を置く売春婦だとわかれば、
朝森さんの会社での立場はなくなりますね・・。

私だって、好きで事を荒立てるつもりはありません。
月の内半分、奥さんが私のマンションで暮らしていただければ良いのです。
それだけで、私はこの事実を全て忘れます・・・」

竹内から明かされた事実・・、妻が売春婦である事実は朝森に衝撃を与えました。スワップ愛好
家ですから、他人に妻を抱かせることには免疫があるのですが、まさか敦子が売春組織に身を落
しているとは夢にも思っていなかったのです。

最初は敦子への怒りで一杯になったのですが、少し冷静になると別の心配が彼の頭を占領しまし
た。その頃、朝森は熾烈な課長昇進競争の渦中にいたのです。そんな時、妻が高級コールガール
組織に籍を置いている事実がバレると朝森の将来は閉ざされるどころか、会社にいることさえ難
しくなるのです。なんとしても秘密を守りきりたいと朝森は考えたのです。この時、朝森には敦
子の立場を考える余裕がなかったのです。

頭を抱えて悩んでいる朝森を見て、敦子は彼女自身から申し出て、竹内のところへ行くと言い出
したのです。朝森はただ頭を下げて敦子を見送ったのです。


[12] 一丁目一番地の管理人〈403〉  鶴岡次郎 :2012/05/06 (日) 13:32 ID:De6rmYmo No.2228
この時以来、二人の間に微妙な風が流れるようになったことは否めません。そして、竹内が夜逃
げすることになった時、敦子の背中を押したのも、二人の間に発生したこの微妙な感情だったの
です。

安易な道を選んで敦子を人身御供に差し出した罪の意識を、敦子が去って以来、朝森はずっと抱
き続けているのです。その気持があるからこそ、竹内と一緒に逃げた敦子を朝森は何時までも待
ち続けることが出来たのかもしれません。

一方敦子は竹内の言いなりになりながら、次第に竹内との生活に溶け込んでいたのです。



「・・そうですね、男と女、どんなに思い合っていても、カラダの関係が切れると疎遠になりま
すね、逆にそれほど好きでなくても、カラダの相性がいいと、女はダメですね・・。その男から
離れられなくなるものですね・・」

「アラ・・、敦子さん・・、真に迫った感想ね・・・、
何か・・、身に覚えがあるの・・、
でも・・、いつも言っているように、お客様には特別の感情は持ってはダメよ・・」

数ヶ月ほど遡ったある日、ここは桜子の事務所で、その月の売春手当てを受け取るために敦子は
会社が終わった後この事務所へやってきたのです。いつものように男と女の生々しい体験話にな
っているのです。

「いえ・・、ご心配なく、お客様には惚れたりしません・・・、
でも・・、最近チョッとしたことがあって、主人の元を離れているのです・・。

中年過ぎの男性に少し脅されて、一緒に暮らしています。
最初は彼の玩具になるのがたまらなく嫌でしたが、
毎日、変態的な愛撫にさらされていると、それが普通になって・・、
いまでは・・、それが楽しみで、
もう・・、彼無しでは暮らせなくなりました・・・・
女って・・、本当にスケベな動物ですね・・・

この間も・・、寝室で十分抱き会った後、
下着も着けないで、ワンピース一枚で外へ連れ出されて、近くの河原へ行った。
河原の土手にはかなりのカップルが集まっていて、その中で真っ裸にされて・・・、
私・・、もう・・、夢中・・になっていました・・」

決して桜子に救いを求めたわけではなかったのです。むしろ、充実している性生活のお惚気話を
桜子に聞かせるつもりだったのです。桜子の表情がそれと判るほど変わっています。

「敦子さん・・、
裸で抱き合った話はもう、いい・・
それよりも、その竹内と言う男、何処まで知っているのかしら・・」

少し上気した表情で、竹内との情事を得意そうに話している敦子の口を桜子が邪険に止めました。
そして、最期の言葉を独り言のように呟いて、桜子は目の前に居る敦子を無視して、自分の世界
に入り込んでいたのです。

組織の秘密を部外者に知られた。まさに桜子にとっては最悪の事態が発生していたのです。この
失態が組織上層部に知られると、組織の幹部にまでのし上がっている桜子の立場は一気に落ちま
す。

「敦子さん・・、なんでもっと早く知らせてくれなかったの・・
いいわ・・、敦子さんはそのまま今の生活を続けてちょうだい、
それでも、何か変化があったら、必ず知らせるのよ・・」

まずい事をしゃべってしまったと、敦子は反省をしていましたが、この時点でも、本当の意味で
桜子の気持ちを敦子は理解していませんでした。そして、お金を受け取り、逃げるように桜子の
事務所を後にしました。後に残った桜子は一人何事が考えに耽っていました。そして、20分近
く考え込んだ後、ケイタイを取り出し、長い間、相手と話をしていました。

こんな場合、通常なら組織の上層部に相談して対処方法を決めるのですが、桜子はこの程度なら
自身の裁量で極秘裏に処理できると踏んで、かねて知り合いの圧村和夫に命じて、竹内に脅しを
かけたのです。後になって考えると、桜子のこの判断が甘かったのです。彼女の犯した過ちが真
黒興産の屋台骨を揺るがすことになるのです。


[13] 一丁目一番地の管理人〈404〉  鶴岡次郎 :2012/05/07 (月) 10:47 ID:QSmHqQf2 No.2229

敦子を手に入れて、有頂天になって新婚生活を楽しんでいる竹内のところへ、圧村和夫が突然訪
ねてきました。その道のプロである圧村の脅しに竹内は一も二もなく屈しました。慰謝料として
要求された100万円も言われるまま工面して差し出すことにしたのです。おそらくこの100
万円は桜子の懐に入らず、圧村の収入になるものだったと思われます。

竹内が100万円を差し出し、敦子を開放する・・、ここで終わっていれば、敦子がアパートに
戻り、朝森と敦子は以前のままの生活を続けることが出来たのです。また、桜子の売春組織も安
泰だったのです。そして、真黒興産は竹内の取引銀行に圧力をかける必要がないわけですから、
竹内は苦しい中、頑張り通し、会社を持ち堪えることが出来た可能性が高いのです。

しかし、人の世には意外な落し穴がいつも待ち受けています。竹内が差し出した100万円が土
手の森殺人事件を誘発したのです。圧村和夫が殺され、竹内が工面した100万円は奪われまし
た。そして、偶然とはいえ、何かに導かれるように、敦子が死体の第一発見者になったのです。


買春組織の秘密が竹内と敦子から漏れるのを防ぐ目的で、真黒興産が動きました。売春組織を解
体することを決め、その時間稼ぎの意味で竹内と敦子の身柄を一時隠すため、取引銀行に圧力を
かけ、竹内への融資を打ち切らせたのです。銀行からの融資を断たれた竹内商事は倒産に追い込
まれ、竹内は真黒興産が描いた筋書き通り、夜逃げすることになりました。敦子が竹内に付いて
行かなければ、事態は少し変わっていたのですが、彼女は逃避行の道を選んだのです。こうして、
この土手の森殺人事件は人々の運命を大きく狂わせることになったのです。

「竹内さんはあなたに酷いことをしたと謝っていました。これからは、過去を忘れて露天商の親
父として、人生を楽しむと言っていました。そんな彼にマンションは不用だから、売るなり、そ
のまま使うなり、好きにしてくれと言っていました。

勿論、私はこれを受け取るのを拒否しましたが、彼は聞き入れてくれませんでした。考えたので
すが、私はともかく、あなたにはこれを受け取る資格があると思います。必死で守った財産を竹
内さんはあなたに受け継いで欲しいのだと思います」

「判った・・、
しばらくはこれを預かることにしよう・・、
将来、竹内さんがこれを必要とするようになった時は、黙って返却することにしよう・・。

ところで、もう一通の封筒は・・・、
ああ・・、これは・・、竹内さんが持っていた敦子のアレか・・・」

以前竹内から見せられていて、その封筒の中に、敦子が高級コールガールをしていた事実を暴く
証拠の品、探偵が撮影した写真と報告書が入っているのです。

「ハイ・・、
このことではどのような申し開きも出来ないと、
竹内さんはただ頭を下げていました。
私達の手で、処分して欲しいと託されました・・」

「う・・・ん、こんな形でこの品と再会するとは・・・・。

竹内さんからこの証拠を見せられ、敦子の隠された秘密を教えられ、脅された時、本当にびっく
りした。そして、その時、敦子に裏切られたとの思いが強く、自分の立場ばかり考えて、お前を
守ることを忘れていた。竹内さんの要求に対して、僕はもっと強く抵抗すべきだったと後になって
随分と後悔した。お前を竹内さんに差し出したことを申し訳なく思っている。

あの時の僕は男の風上にも置けない奴だと、今でも自己嫌悪している・・・」

朝森が深々と頭を下げています。悲しそうな表情を浮かべ敦子が朝森をじっと見つめています。
竹内の脅しに屈したことは、朝森にとっても、敦子にとっても、決して思い出したくないことな
のです。


[14] 一丁目一番地の管理人〈405〉  鶴岡次郎 :2012/05/15 (火) 12:29 ID:kfA5WQT2 No.2230
「僕のこと酷い男だと思っただろう・・・、
捨てられて当然の男だよな・・・・」

「・・・・・・・」

何か言わなくてはと思っているのですが、敦子は何も言えないのです。ここで恨みの言葉でも出
すことが出来れば、敦子は勿論、朝森も救われるのですが、敦子はそれさえ出来ないのです。自
身の傷跡をそれぞれに自分で舐めることしか出来ない二人は、そのまま黙って下を向いていまし
た。


朝森がゆっくりと口を開きました・・。過ぎたことを何時までも悔いていても、何も進展はない
と朝森は考え直したようです。すっきりとした表情に戻っています。

「ところで・・・、
あの組織とは・・、今も縁が切れていないのだろう・・・」

二人にとって大切な問題が未だ未解決であることに朝森は気が付いたのです。竹内とのことは解
決しても、敦子は売春組織から開放されていないはずで、むしろその問題がより重要であること
に改めて朝森は気が付いているのです。

「安心してください・・。
アノ稼業から足を洗うことが出来ました・・」

「エッ・・、本当なの・・・・
良く判らないが、一度その道に足を踏み入れると、金輪際、抜け出すことは難しいと聞いてい
るが、この先、組織から呼び出されることはないのか・・」

「貴方が言うように、アノ組織から抜け出すことが難しいのは確かです。私も組織の仕組みが判
るにつけ、あの組織から逃げ出すことは、永久に不可能だとあきらめていました。

それが、意外なことに、会社はあっさり私を開放すると言ってくれました・・。
それどころか、退職金を50万円もくれたのです・・・。

余談になりますが、この50万円は一文無しで夜逃げした竹内さんと私にとって、天からの授か
りものに近い貴重なお金になりました」

驚きの表情で朝森が敦子を見つめています。そんなことがあるはずがないという朝森の表情なの
です。敦子が微笑を浮かべて何度も頷いています。

敦子が売春組織に囲い込まれた事実は拭いがたい傷跡を二人の心に残しているのです。この問題
がクリアーされない限り、二人の仲が元に戻ることはないと二人は思っているのです。そして、
この問題を解決するのは難しく、しばらくは敦子の売春行為を黙認して、時が解決してくれるま
で一時的に棚に上げて、二人の生活を続けようと、朝森は悲壮な決意を固めているのです。それ
だけに、敦子が組織から開放されたと聞かされても、そのまま鵜呑みにできない朝森なのです。

「あなたが疑うのはもっともです・・。私だって、組織から開放すると聞かされた時は、何か裏
があるはずだと疑いました。しかし、やがて、ことの真相が判ったのです。あの土手の森殺人事
件が勃発して、私が第一発見者になり、警察と深く接触することになりました。この事実が私に
幸運を呼び込んだのです・・」

朝森を見つめる敦子の瞳に涙が溢れています。朝森は戸惑いの表情を隠しきれません。

「警察から最初の事情聴取があった直後、組織の一員が私に接触してきました。てっきり新しい
仕事の話だと思っていたところ、買春組織から抜けるよう要請されたのです。勿論願ってもない
ことだったのですが、とても言葉通りには信じられなくて、私はその男の真意を探っていました。

男はさらに言葉を続けて、売春行為とその組織に関して一切口を封じることを条件にして、私の
身柄を解放してもいいと、言ったのです。どうやら、殺人事件の第一発見者となった私は、組織
にとって危険な人物になっていたようなのです・・」

「そうか、そんな経緯があったのか・・・・」

半信半疑ながら、敦子が足を洗えたことを朝森はようやく信じ始めていました。〈1〉


[15] 一丁目一番地の管理人〈406〉  鶴岡次郎 :2012/05/18 (金) 10:57 ID:ED/uktXY No.2231
2230(1)

「組織もお前の口を恐れているのだな・・
それはそれで別の心配があるが・・、
ここまで何を起こらなかったのだから・・、
その心配はないか・・・」

独り言のように呟き朝森は何か思いにふける仕草を見せていましたが、直ぐに平静を取り戻し、
笑みを敦子に向けました。

「あの仕事から完全に足を洗えたことはこの上ない良いニュースだ。
ひとまずはこれで安心だ・・・。
しかし、この先、組織が約束を守らない懸念が少しでも出たなら、
思い切って警察に出向いて全て話すべきだと私は思っている。

警察に話すことで、ことが公になり、僕が職を失うことになっても、
お前を守るためなら、そんなこと、僕は何とも思わない・・。

もう・・、逃げるのはよそう・・、
お前さえ側にいてくれれば、他に何も要らない・・・」

「ありがとうございます。
こんな私に、そこまで言っていただけるなんて・・、
お礼の言葉もございません・・・」

深々と頭を下げて敦子はその姿勢のまま頭を上げることが出来ませんでした。竹内から脅かしを
受けた時、どうして、もっと強く出てくれないのかと、朝森を恨んだこともありました。夫との
仲がそれだけの関係なら、朝森と切れても悔いはないと自身に言い聞かせたこともあったのです。


「元はといえば、誰が悪いのでもなく、全て私が悪いのです。
綺麗だとか、スタイルがいいとか煽てられて、軽い気持でその道に入ってしまって、気がついた
らがんじがらめに縛られて、組織の一員になっていました。
逃げたくても、売春婦である事実を世間にばら撒くと脅されると、どうにもなりませんでした。
完全に私は籠の鳥になっていたのです。

一方、今回のことで気が付いたことがあります。会社は秘密組織の実態が警察の手で暴かれるの
を、酷く恐れていました。私自身、組織の実態はほとんど知らされていませんが、それでも私か
ら組織の秘密の一端が漏れ出すことを会社は極端なまでに恐れていたのです。

・・・ということは、私は組織の生命線を握っているのだと、気がつきました。
いえ・・、正確に言うと、露天商の仲間である君江姐さんから、そのことを教えてもらったので
す・・」

君江には心を許し、全てを話していた敦子です。組員を夫にしていた経験を持つ君江には、組織
の弱点が見通せたのです。

「売春婦である事実が組織の手で暴かれるのを敦子さんが恐れているように、
敵もあなたが握っている組織の秘密が洩れるのが恐いはず・・、
50万円を出したのはその口止め料だよ、お互い相手の弱点を握っているのよ・・。

だから、そんなにおびえる必要はない・・。
ただ、組織は本当に恐いから、決してこのことは誰にも言わないことだね、
私も今日聞いたことはすべて忘れることにする・・。

警察に行くのは、最期の、最期・・・、
本当に追い詰められて、どうにもならなくなった時だよ・・。

まァ・・、状況から見て、敵もむやみなことはしないと思う・・、
一生口を閉ざす覚悟でいるのが賢明だと思う・・」

君江はそう言って、それ以降、このことには一度も触れたことが無いのです。


「そんな事情ですから、組織と縁が切れたのは確実だと思います。
もし、万が一にも、これから先、組織から呼び出しがあるようでしたら、
今度こそ、私は迷わず警察に出向きます・・」

やや蒼白な表情になり、敦子は朝森をしっかり見つめて話しています。彼女の固い決意が朝森に
も十分判った様子です。

「敦子は強くなったね・・、
これから先、何が起きても、二人で頑張れば、何とかなるよ・・。

考えてみれば・・、
組織から足を洗えたのも竹内さんのおかげだといえる。
その意味でも、竹内さんにはお礼を言わなくてもいけないね・・。

大きな遠回りをしたけれど、
僕達、ようやく、本当の結婚生活のスタートラインに着いたのだね・・」

「・・・・・・」

敦子が黙って朝森を見つめて、なんども何度も頷いています。


[16] 一丁目一番地の管理人〈407〉  鶴岡次郎 :2012/05/22 (火) 12:50 ID:iG2ami12 No.2232
「健チャン・・・」

帰宅して以来はじめて朝森を愛称で呼んでいます。結婚以来、いつもそう呼んでいたのです。

「私・・、
40歳を前にして、普通の女が決して経験しないことを一杯やってきました。
もし、こんな私を許していただけるのなら・・・、

私・・・、これからは普通の女に戻ります。
あなたの子供を作り、いい母親になります。

いろいろ経験した生活の中でつくづく思い知らされました。
普通の生活が一番楽しく、大切だと思うようになっています」

敦子の言葉に朝森が驚いています。

「そうか・・・、
敦子もそう考えるようになっていたのか・・」

それ以上言葉が続かないほど朝森は感動していたのです。敦子をじっと見つめる瞳に涙が浮かん
でいます。

「お前が家を出て以来、私はお前と私の関係を考え抜いた・・・。

夫婦とは何か・・、
私が敦子に求める物は何か・・、
そして、一番大切なことだが、
奔放な生き方に慣れた敦子が受け入れることが出来る生活とは何か・・・

いろいろ考えたが、これと思う答えは見つからなかった・・・
それでも、私は敦子と暮らす道を選び、お前を待ち続けた・・・。

そして、お前が戻ってきた・・
私はお前の元気な姿を見た時、決心を固めた・・。
何の迷いもなかった・・・。

敦子と一緒に暮らすことが一番大切で、そのことのためなら全てを犠牲にしても悔いはないと
思った。そして、無理にお前の行動を縛らないで、あるがままに受け入れることを決めていた」

「・・・・・・・」

今度は、朝森の言葉に敦子が返す言葉を失っていました。

「実を言うと、僕の本音をいえば、
お前に奔放な生き方を棄てて欲しいと思うようになっていた。
しかし、それは僕の口はからは絶対言えないことだった。
お前にそんな奔放な生き方を教えたのは僕なのだから・・・、

正直に言おう・・、僕達は普通の夫婦関係は作らないと、妙に気取った気になって、刺激を求め
てスイングやスワップをやっていたが、僕はその興奮の中にいても、いつも満たされない、心寂
しい思いだった・・。その頃から、僕は別のものを求め、探していたと思う・・。

今日・・、会社から帰ってきた時、部屋に明かりが灯っていて、
キッチンから良い匂いが流れてきて、お前が玄関で出迎えてくれた・・。

その時判ったのだ・・・、
これこそが僕が求めているものだと判った・・・。

お前が普通の生活に戻りたい、それが一番だというのを聞いて、
まさに僕が求める生活もそれだと思った・・・。

その一方で、奔放に他の男とセックスする生活から敦子は抜け出せないはずと、
僕は覚悟を決めて、そんなお前を受け入れて、一緒に生活をするつもりだった・・・。

まさかお前がそこまで考えるようになっているとは、
正直言って驚きだよ・・・。
勿論、うれしい驚きだが・・・。

それにしても・・、
何がそれほどまでにお前を変えたのだろう・・・・
いや・・、誰がお前をそれほどまでに成長させたのだろう・・・」

その疑問の答えは判っているようで、最後の言葉を独り言のように言って、朝森が敦子の瞳の奥を
覗き込んでいます。いたづらっぽい笑みを浮かべて敦子が朝森に挑戦的な視線を向けています。

「あなたが考えているように、竹内さんとの生活が私を変えたのです・・。
逃げ回りながら、私達は獣のように交わりを続けていました。
それだけが、この世に生きている証だと、二人は考えていたのです。

正直に申し上げます。
私はあなたのことも、会社のことも、両親のことも全て忘れて、
竹内さんとの交わりに埋没していました・・・

あの頃の私達は、人間ではありませんでした・・。
まるで、獣(けもの)そのものでした・・・・・」

少し紅潮した表情で、それでも視線を朝森に向けたまま、敦子は話しています。(3)


[17] 一丁目一番地の管理人〈408〉  鶴岡次郎 :2012/05/23 (水) 11:31 ID:0Cuj1U3A No.2233
2232(3)


「君江姐さんのことはお話しましたね・・、
ヤクザの旦那様に先立たれて、一人で鯛焼き屋を切り盛りしている方です。
その方に可愛がられて、私は何でも彼女に相談していました・・。

あの方に言われた、一言で私は目が覚めたのです・・・・

以前の私であれば、聞き流した言葉でしたが、
獣のような生き方をしていた私だからこそ、
君江姐さんの言葉が身に染みたのだと思っています・・・」


Uの回状を受け取った的屋の組長の計らいで、竹内と敦子は露天商の仲間入りをしました。慣れ
ない仲間との集団生活をするようになって一ヶ月を過ぎ、竹内と敦子はそれまでのセックスに明
け暮れた、すさんだ生活から徐々に立ち直り、やっと人間らしい生活に戻りつつあったのです。

そんなある日、君江が敦子を遅い夕食に誘い、近所の蕎麦屋に二人で入ったのです。

遅い時間で客は敦子たち二人きりでした。店の主人と君江は顔なじみですから、店の暖簾が取り
入れられた後も二人は飲み続けることが出来ました。その時間、竹内は仲間の露天商と宿舎であ
る安宿で焼酎を飲んでいたのです。

「敦子さん・・・、私達の生活に少しは慣れたようね・・・。
あなたを見ていると、若い頃の私が思い出されて、苦しいの・・、

少し私の話を聞いて欲しい・・・」

その時、君江は50歳を越えていて、仲間内では組長に次ぐ力を持っていて、押しも押されもし
ない地位を固めていたのです。

君江は元々、平凡なサラリーマンの妻でした。子供の居ない平凡な家庭にやや飽きが出始めてい
た頃で、毎日のように君江はあてもなく街へ出ていました。周囲を圧倒するような美貌に恵まれ
ていたことも災いを招きました。街で偶然出会った組員の魅力にひきつけられ、君江はズルズル
と堕ちて行き、離婚、そしてヤクザの情夫になったのです。

ヤクザの夫はそれなりに君江を大切にしたのですが、君江が40歳の時、仲間内の抗争であっさ
りこの世を去ったのです。

「ヤクザの夫が亡くなった直後、一度だけと、自分に言い聞かせて、
元夫の家庭を覗きに行ったことがある・・。
小さな庭で、二人の幼子と一緒に遊んでいる彼を見た・・・。
私が座るはずだった彼の側には可愛い奥さんが居た・・。

その夜、自棄になった私は、街で会った男に、手当たり次第に声を掛け、
見知らぬ男達に次々と抱かれた・・・。
何人もの男に抱かれても、ほとんど感じなかった・・・。

そんな私を救ってくれたのが、先代の組長・・・。
その頃、彼は60に手が届いていたはず。
街で声をかけてきた私をじっと見つめて、ホテルに黙って付いてきた。
彼は、私を抱かないで、話を聞いてくれた・・・」

それから間も無く、君江は露天商の仲間に加わり、それ以来、自棄になることもなく露天商を続
けているのです。


[18] 一丁目一番地の管理人〈409〉  鶴岡次郎 :2012/05/24 (木) 15:46 ID:32JccgU2 No.2234

「敦子さんを見ていると不安を感じる・・・、
確か、ご主人が嫌いで別れたのではないと言っていたわよね・・。

竹内さんとは何かの弾みで一緒に暮らすようになり、
彼と生活することが、与えられた自分の運命だと受け入れている。
しかし、これで良いのかと思うことはあるはずね・・。

そして、竹内さんとのセックスに埋没することで、
全ての問題を忘れようとしている・・。
昔の私と同じ状態だよ・・・。

二人が今の生活をいつまでも続けることは難しいと思う。
10年先、あなたは女盛りを迎え、竹内さんは老境に入る。

そんな時、きっと二人は後悔すると思う・・。
多分、竹内さんの後悔の気持は、あなたのそれよりもより深刻だと思う。

少しでも、今の生活に疑問を持つようなら、
思い切って、今の生活から抜け出し、元の生活に戻るか、
新しい生活にチャレンジする道を選んで欲しい・・・。

あなたは若い、しかし、その若さはいつまでも続かないことも確か、
決心するなら早い方が良い・・・。

今では、私自身、後悔の気持ちは薄れたけれど、
私の目に焼きついたあの光景、
元夫家族の楽しい光景は一生忘れることが出来ない。

女にとって、夫や子供と一緒に平凡に暮らすことが、
一番幸せな生き方だと、あの時感じた・・。
この気持ちは今でも変わらない・・・。

敦子さんには、私とおなじ後悔をさせたくない、
ダメかもしれないけれど・・、
元の鞘には戻れないかもしれないけれど・・、
あきらめるのではなく、逃げるのではなく、人生に挑戦して、
打ちのめされても、最期まで頑張る道を選んでほしい・・」

君江の言葉は敦子の心を揺さぶりました。この時を契機に、結婚、妻の立場、夫のこと、そして
女の一生について敦子は深く考えるようになったのです。


「君江姐さんに諭されて、
私は目が覚めた思いになりました。

10年先、20年先を考えた人生計画を私は何も持っていなかったのです。
私と同年代の女達が、子育てで苦労している時、
私は、竹内さんとの情交に溺れ、明日のない生活を続けていたのです。

これではダメだと思いました・・。
竹内さんとの生活を続けるにしても、止めるにしても、
自分自身に責任が持てる生活をするべきだと思い始めたのです・・」

「・・・判った・・。
良く判った・・、良く決心してくれた・・。
それ以上聞かなくても、よく判った・・。

君がいない間、考え抜いて出した僕の結論も君と一緒だ。
今日から、僕達の本当生活がスタートするんだよ、

今日は僕達の結婚式だね・・・、
・・ということは・・、
今夜は初夜ということか・・・・」

朝森がにんまりと笑って、敦子を見ています。敦子が椅子から立ち上がり、朝森の膝の上に腰を
下ろし、眼を閉じて、唇を差し出しました。それから先、二人に言葉は不要でした。肩を抱き会
い、二人は寝室へ向かいました。


[19] 一丁目一番地の管理人〈410〉  鶴岡次郎 :2012/05/25 (金) 14:36 ID:kxRVycgk No.2235

「貴方に謝らなくてはいけないことがあります・・・。
私・・、アソコの毛が無いのです・・・」

朝森の熱いキッスから解放されて、彼の手が直に乳房に触れるようになった時、敦子が朝森の手
を遮り、真っ直ぐに彼を見つめて囁きました。驚いた表情で朝森が敦子を見ています。

「あの人が・・、無い方が好きだと言うから・・、
スミマセン・・・・、全部剃り落としています・・・」

朝森の右指がその部分に伸び、その事実を確かめています。

「僕も・・、この方が好きだよ・・」

「ああ・・・、うれしい・・」

「お前が剃ったの・・、
それとも・・、
竹内さんが、やったの・・」

「ああ・・、スミマセン・・・。
剃るのはあの人の役割で・・・
一週間に一度ほど・・・、丁寧に剃ってくれました・・・」

「そう・・・、
一週間に一度か・・」

ベッドの上で、身体を一杯に開いて竹内にソコを剃らせている光景を朝森は思い描いていました。
激しい嫉妬心が湧き上がっていますが、その想像は朝森にある種の快感を与えていました。

「股の間に頭を埋めて、
ここに息がかかるほど顔を近づけて、
竹内さんはこの作業をやったのだろうな・・・、
剃った後、丁寧に、唇と舌で嘗め回したのだらうな・・」

「・・・・・・・・」

頬を赤らめて敦子は無言のまま朝森を見つめています。その無言が肯定を意味していました。

「ああ・・・、悔しい・・・」

笑みを浮かべた朝森が明るい口調で言っています。

「・・スミマセン・・・・」

「次は僕が剃るんだね・・・」

「ハイ・・、よろしくお願いします・・」

「竹内さんに負けないよう頑張るよ・・、
しかし、モノの大きさではとても敵わないからな・・・
僕の取得は・・・・」

「ムム・・・・・・」

更に言葉を続けようとする朝森の口を、敦子の口が塞ぎました。同時に彼女の右手が朝森の股間
を探り、確かな塊を確認していました。そして、彼の右指が深々と亀裂に埋もれていました。息
苦しくなったのか、敦子が白い喉を天井に向けて、喘ぎ声を上げています。朝森がこぼれた乳房
に唇を押し当てています。


[20] 一丁目一番地の管理人〈411〉  鶴岡次郎 :2012/05/27 (日) 11:58 ID:LQ9SHJXw No.2236
「ああ・・・、
未だあなたに隠していることがあります・・・。

私・・・、ああ・・・・
ラビアピアスをしていました・・。

多分・・、その跡が判るかと・・・・・。
片側に3ヶ所、併せて6個・・・」

「・・・・・」

出来ることなら言いたくないと思っていたようですが、バレてしまってから言い訳をしたのでは、
せっかくここまで持ってきた朝森の気持を損なうことになると思ったのです。敦子は朝森の右指
の微妙な動きを膣に感じながら、思い切って言いました。

突然の告白に乳房を這っていた朝森の唇が止まりました。敦子が息を呑んで朝森の反応を確かめ
ています。

乳房から唇を離し、頭を持ち上げ、体に絡みついている女の右脚をゆっくりと持ち上げ、その部
分を覗き見ています。洪水の後のように陰水にまみれて肌に張り付いた陰毛の中に、赤黒いラビ
アが見事に立ち上がっています。敦子のラビアはかなり大きいのです。勿論朝森のお気に入りの
部分です。どうやらかすかな跡を見つけたようですが、それとわかるほど定かな傷痕ではありま
せん。

しばらくソコを覗きこんでいた男が、ゆっくりその部分に唇を寄せました。ぶ厚いラビアを口の
中に吸い込んでいます。女が悲鳴を上げ、それでも両脚を一杯開いています。

男の舌がピアスホールを探しているのでしょう、ラビアをしっかり咥え込んだ唇の中で、舌が激
しく動いています。女が呻きながら、男の頭を両脚で締め付けています。そして、男がその部分
に強く歯を立てました・・・。

「ああ・・・、痛い・・・・、痛い・・・・・、
堪忍してください・・・、許してください・・・、.

あなたに無断で、あなたの持ち物に傷つけてしまいました・・・
ア・・、ア・・・、痛い・・ィ・・、
カンニンして・・・ェ・・」

やや芝居がかった口調で敦子が謝っています。

笑みを浮かべて朝森が股間から頭を抜き、敦子の唇に唇を押し付けています。貪るように敦子が
朝森の唇を吸い込んでいます。口一杯に広がる己が女陰の香りに敦子が狂い始めていました。


「竹内さんが付けるようにいったの・・・?」

「そうじゃないの・・、
むしろ竹内さんは突然のことで、びっくりしていた・・」

「君の好みで付けたのか・・!」

「旅先で、露天商の仲間達は大部屋で雑魚寝します。
そんな中で、カップルは誰憚ることなく絡まり合います。
それで気が付いたのですが、全部の女がラビアピアスをしていました。

仲間の女が勧めるし、私も興味があったから・・
それで、私も・・・、

最初はびっくりしていたあの人も、喜んでくれるし・・・、
皆も綺麗だと言ってくれた・・・」

朝森に腰を抱かれて、男の体に濡れた女陰を押し付けながら、甘えた声で敦子が説明しています。
口では謝っていますが、朝森がそれほどそのことを嫌っていないことを敏感に感知しているので
す。


[21] 一丁目一番地の管理人〈412〉  鶴岡次郎 :2012/05/28 (月) 10:52 ID:NRhFlDng No.2237

的屋仲間の女達は、効果的に女自身を男達にさらけ出す術をよく知っています。服装にしても、
女達自身の好みより男達が喜びそうな物を選びます。ラビアピアスやボデイピアスも男達が好む
と判れば積極的に取り入れていたのです。

的屋の女達は、女の本能を駆使して、男達の喜ぶことを探り出し、一般社会の女達がためらうよ
うなことであっても、それを実践することが男の愛を勝ち取る近道だと知っているのです。確か
に、女の本能に忠実に、自然体で男に媚びる女は、男にとって、この上なく愛しく見えるもので
す。

こんな的屋集団の中で過ごした半年の経験が敦子を変えました。敦子はこの集団の中にいて、男
と女の問題は相手の気持ちや、反応を考えすぎると、帰って逆効果になるもので、女の本能で男
に接することが大切なことを身を持って学び、それを実践出来るようになっていたのです。

以前の敦子なら、決してラビアピアスのことは告白しなかったと思います。しかし、ことがバレ
て告白するより、彼がそのことに気づく前に告白する道を選んだ敦子は、朝森が露天商の男達と
同様にピアスに並々でない興味を示すのを見て、朝森もやはり男であると確信していたのです。
そうと判れば、後は敦子のペースで引っ張れます。朝森のスケベ心を見通した敦子はラビアピア
スの話題をさらに引っ張ることにしました。

「建ちゃんは、多分びっくりして、嫌うだろうと思って・・、
今日は取り外しています・・・。

あなたの許可を得ないで、こんなところに傷をつけてしまって・・、
いけないことをしたと後悔しています・・・・。
貴方が嫌なら、これから先、決して、ピアスを付けたりしません・・・」

表面上は殊勝な表情を作り敦子が頭を下げています。笑みを浮かべたまま、朝森が敦子の耳に何
事か囁いています。

「エッ・・・、
良いの・・・、本当に良いの・・・、
アソコにピアスを付けても良いの・・・?」

朝森の首に両腕を巻きつけ、唇を押し付けてお礼を言っています。

「うれしい・・、実を言うとね・・・、
私・・、癖になっていて・・・、
ピアスを外せない体になっているの・・」

朝森の胸に頬を寄せて、男を見上げながら、ねっとりした口調で敦子が囁いています。彼女の右
手は男根をしっかり握っていて、男の反応を確かめているのです。女の期待したとおり、朝森は
女の話に嵌っているのです。

「ピアスを付けると・・、それだけで濡れてくるの・・・、
付けたまま昼間仕事をしていると、いろんなところが刺激されて、
欲しくて、欲しくて・・・、夕方にはびっしょり濡れている・・。
私だけでない、仲間の女は皆そうなると言っていた・・、

夜が待ち遠しいの・・・。
私インランだよね・・・・、
こんな私・・、嫌いにならない・・?」

淫らな笑みを浮かべて女が囁いています。女の欲情臭が朝森の鼻腔を刺激していました。もう完
全に女のペースです。女の指が絡まった朝森の男根が限界まで膨張しているのです。

ピアスに関する敦子の説明に嘘や誇張はありませんでした。それを付けるだけで、敦子は勿論、
仲間の女達は欲情していたのです。この現象は、普段は身に着けない派手な下着を着けた女がそ
れだけで欲情するのに似ています。人知れず、破廉恥な飾りをソコに付けている意識が女達を欲
情させるのです。

「最初は喜んでいなかったあの人も直ぐにピアスファンになった、
ピアスを口で引っ張ったり・・、
ピアスに糸を結びつけて、その先に、いろんなものをぶら下げて遊んだり、
ある時など、昼間、ピアスに糸をつけて、お店に立たせて、糸を引くの・・、
お客さんの相手をしながら、私・・、いっぱい濡らしていた・・・。

ああ・・・、ダメ・・・、こんな話をしていると・・、
思い出しちゃう・・・、私・・、感じる・・・」

男が不愉快に思っていなくて、興奮して敦子の話を聞いているのを肌で感じ取って敦子もまた、
高まっていました。そして、竹内や、その他の男にピアスを弄ばれたことを思い出し、はっきり
判るほど潮を噴き上げているのです。(1)


[22] 一丁目一番地の管理人〈413〉  鶴岡次郎 :2012/06/04 (月) 14:48 ID:MoTGiKt. No.2238
2237(1)

「ああ・・・、ゴメンナサイ・・・、
こんなに濡らしてしまって・・、
私・・、思い出して、興奮してしまった・・・」

朝森の顔を見ないようにして、敦子が甘えた声で言っています。噴出した潮が朝森の右手は勿論、
彼のパジャマまでじっとりと濡らしているのです。女をしっかり抱きしめ、そのうなじに、朝森
が唇を押し当てています・・。

「ああ・・・・、ダメ・・・、
そんなにされると・・、たまらくなる・・・・、

本当を言うとネ・・、
あなたに叱られるかもしれないと心配していた・・。
私・・、幸せ・・・。

もっと話をしてもいい・・・?
もっと、いやらしい話だよ・・、良い・・?」

朝森が返事の代わりにキッスを返しています。敦子が男の唇を情熱的に吸っています。異音が敦
子の下腹部から聞こえてきます。新たな潮を噴出しているのです。男と女は限界まで高まってい
ました。

経験豊富な二人は、ここで合体を我慢することが、更なる興奮を引き出すことになるのを知って
いるのです。敦子は濡れた下腹部を男の太股に強く押し付けながら話を続けました。

「普通、挿入する時は、ピアスを外してもらうのだけれど、
時にはピアスをつけたまま、入れてくることがある、
危険だけれど、注意すれば何となるのよ・・・

そうすると、ピアスに太いアレが引っかかって、
私のアソコの周りの肉が、無理やり引っ張られて、
酷い痛みを感じる時がある・・・、

それがとっても良いの・・・、癖になるほど良いの・・・、

ああ・・・、また・・、濡れてきた・・・・
ああ・・・、もう・・、我慢できない・・・

入れて・・・、
欲しい・・、ダメ・・・?」

朝森が敦子の唇を吸い、女が堪えられないように身体をくねらせて、男の体に絡みついています。
女陰から愛液が迸り出て、男の身体を濡らしているのです。

「そしてネ・・・、ああ・・・、
私だけではなく、男の人も痛くなる時があるの、
竹内さんも、時々大声を上げて、アレを握っていた・・、
血が噴出すことだってあった・・・

でね・・、そうなった時は、互いのソコを舐めあうの・・・
丁寧に、痛みが消えるまで、舐めるの・・・

フフ・・・、それからが大変・・・」

敦子は男を焦らすように、淫靡な話を続けているのです。その話を朝森が喜んでいることを敦子
はしっかり読み取っているのです。敦子は息を弾ませながら、淫らな話を続けているのです。彼
女の下半身は男の体に絡まり、愛液をふんだんに男の体に振り掛けているのです。余談になりま
すが、この夜以降、敦子はいつもラビアピアスを付けるようになりました。


[23] 一丁目一番地の管理人〈〉  鶴岡次郎 :2012/06/06 (水) 15:16 ID:De6rmYmo No.2241
以前の敦子は、朝森と二人きりの時は、それほど奔放に乱れることはなく、どちらかと言えば控
えめな反応を示していました。勿論、艶話なども、彼女から進んで話すことはありませんでした。

今、身体を濡らしながら、興奮を隠さないで話す敦子の艶話を聞いていて、この半年の間に、彼
女が大きく変わったことに朝森は驚いていました。そして、敦子の変貌は、何故か朝森を心地よ
く興奮させていたのです。

何が敦子をそこまで変えたのか、十分に想像できるのですが、さらなる刺激を求めて、朝森はそ
の答を自身で確かめることにしたのです。


「旅先では男と女が雑魚寝するのだろう・・・、
そんな中でカップルが抱き合うのか、凄いネ・・・。
うっかり相手を間違えることもあるだろう・・・・」

「フフ・・・・、バカね・・、
直ぐ、いやらしいことを考えるのね・・、
でも・・、残念ですが、浮気はタブーなんです・・・ゥ」

朝森が考えていることが判るらしく、敦子が含み笑いを浮かべながら答えています。双方共に相
手の性器に手を添えて話しあっているわけですから、互いの情感の変化が、文字通り手に取るよ
うにわかるのです。朝森の陰茎は先ほどから硬度を保ったまま、一向に衰える兆しを見せていな
いのです。敦子のその部分も、朝森の影響を受けて、止め処なく愛液を噴出しているのです。

「もし、隠れてそんなことをしたら・・、
軽くて追放、普通は、女でも、男でも、手足の骨を残らず折られてしまいます。
私の居る間、そんな不心得者は一人もいませんでした・・」

「そうなの・・・、案外厳しいものだね・・・、
しかし、目の前で全裸で絡みあう女を見ていると、男ならほしくなるだろう・・・
女だって、たまには別のチ○ポも食べたくなるだろう・・・
そんな時はどうするの・・・・」

にやけた表情で朝森が訊ねています。

「そんな時は・・ね・・、
欲しくなったら・・、堂々と申し込むの・・・、
ほとんどの場合、その場でOKになります・・。

そしてね・・、交渉は100%女が仕切るの・・
女が嫌と言えば、交渉は成立しないし、
女が首を縦に振れば、男は不満でも従うことになる・・・」

「じゃ・・、お前も・・」

〈・・・全部の男と寝たのか・・?〉と聞こうとして、朝森が言葉を飲んでいます。

「ええ・・、そうよ・・、
これでも私は人気があったから、最初の日から何人も申し込みがあった。

そして・・、竹内さんはその申し出を断らなかった、
そうすることが、新人の勤めだと教えられていたから・・・。
それに、彼も、相手の持ち物である女を抱けるからあいこなのよ・・」

一瞬、答を躊躇する姿勢を見せたものの、何事か観念した様子を見せて、敦子があっさり白状し
ています。

「勿論、私は・・、
ご存知のようにスケベですから、最初から拒否するつもりはなかった。

それでも、あまり嬉しそうにするのは気が引けたので、
乗り気でないところを見せていた・・・・・。

でも・・、そのお芝居をそんなに長く続けられなかった・・
直ぐに化けの皮を剥ぎ取られてしまった・・・・」

そこで、口を閉じた敦子が上目遣いに朝森を見て、彼の反応を確かめています。笑みを浮かべて
いる朝森の表情を確認し、右手で握り締めている陰茎の逞しさをチェックして、これなら大丈夫
と思ったのでしょう、これだけは言うか言わないか判断に迷っていたことを、思い切って吐き出
したのです。


[24] 一丁目一番地の管理人〈415〉  鶴岡次郎 :2012/06/09 (土) 16:11 ID:5kbpNU4I No.2242
「本当はこの話を建ちゃんにはしないつもりでした。
でも・・、これまで、建ちゃんが真剣に私の話を聞いてくれ、
正確に理解してくれているのが嬉しく、全部話すことにします。
多分、聞けば・・、私が嫌いになると思います・・・。

それでも、私は話すことにします。
本当の私を建ちゃんに知って欲しいのです・・。

話を続けてよろしいでしょうか・・?」

敦子が真剣な表情で問いかけています。返事の代りに朝森が敦子を強く抱きしめていました。


「私達の組はその地方でも一番大きい組で、総員100人近い組員がいた。地方では小さな祭礼
しかないから、全員がおなじ祭礼に出ることは少なく、ほとんど場合、手分けして別々のイベン
トに出るようになっていた。

大体30人ほどがおなじ祭礼に出るように手配されていた。その内、一緒に旅に出る夫婦者は多
くて10組、少ない時は4組ほどで、大部屋で雑魚寝していた。身の回りのものを置く場所も必
用だから、二人の寝る場所は、畳二枚あれば広いほうで、ひどい時は畳一枚の広さのスペースに
二人が寝ることもあった・・」

敦子がゆっくりとしゃべり始めました。勿論、朝森にとっては初めて耳にする話ばかりです。

「初めて旅に出た最初の夜は緊張して、なかなか眠れなかったけれど、昼間の重労働でくたくた
になっていたから、いつの間にか、寝てしまっていた・・。

夢の中にいたら、竹内さんに優しく揺り起こされた・・。
何事が起きたのかと、彼に聞こうとしたら、彼の唇が私の口を塞いだ。
直ぐに判った・・。

常夜灯代りに、部屋には10ワット程度の電灯が点けたままになっていて、その淡い光の中で、
四組の男女が堂々とお祭りをやっているのがよく見えた・・・」

瞳を光らせて、低い声で敦子が話しています。彼女の右手は朝森の陰茎をしっかり握っているの
です。

「旅に出る組員は仲間内でも比較的若い人が多くて、特に女の人は20歳代からせいぜい40歳
前の人が多かった。それに比べて、男は若い人に混じって、中年過ぎの人も居て、私には男の年
齢は正確には判らないけれど、60歳過ぎの人も居たように思う・・。

カップルは夫婦者が多いけれど、中にはその旅だけの急造カップルもいた。
だから、私と竹内さんも、ごく普通のカップルとして仲間は迎えてくれた。

その日は、部屋の中には私達も含めて5組の男女が寝ることになっていて、私達は部屋の真ん中
に寝ていて、両隣に二組の男女が寝ていた。

私達の両側で、4組のカップルが激しく交わっていたのです。

竹内さんはだいぶ前から気がついていて、たまらなくなって、私を起こしたのです。
竹内さん・・、私にキッスをして、私の口を封じて、周囲を見るように促したのです」

4組の男女が発する喘ぎ声、性器の触れ合う音が薄暗い部屋の中に響き、淫靡な香りが敦子の鼻
腔を刺激していました。敦子は一気に高まりました。竹内の唇を貪りながら、彼女の右手は男の
陰茎を求めて動き始めていました。既に男の下半身はむき出しになっていて、男根が異常に勃起
していました。敦子は急いでピジャマのズボンを下着ごと脱ぎ捨て、両脚を一杯開いて、男の大
腿部に絡みつけました。

「私・・、一気に高まって、何も見えなくなって、
そのまま、抱き合った・・・・。

私・・、あまりに興奮して気を失っていた・・・、
しばらくして、気がついて・・、周囲を見渡したら・・・、
とんでもないことになっていた・・・・」

4組の男女が敦子と竹内の布団を取り囲むように座っていたのです。どうやら、竹内は気がつい
ていたようですが、敦子は何も気付かないで気をやり、全身を濡らして、四肢を広げて、布団に
横たわっていたのです。彼女の陰唇から竹内が放った精液が流れ出しているのを含め、敦子の全
てが隅々まで観察されたはずです。


[25] 一丁目一番地の管理人〈416〉  鶴岡次郎 :2012/06/10 (日) 15:20 ID:jD6dbsTg No.2243

「いや・・・、なかなか見事なものでした・・・。
感動しました・・」

駄菓子を商っている40男の鈴木がにこにこ微笑みながら、話かけてきました。彼は全裸で、彼
に身体を寄せている20歳代の女が彼の陰茎をしっかり握っているのです。その場にいる全員が
全裸で、カップル同士、肩を寄せ合い、敦子と竹内の絡みを見学していたのです。

「文字通り裸の付き合いというのかしら・・・、恥ずかしい姿を曝してしまったけれど、周りの
人がみんな自然体だったから、嫌悪感もひどい違和感も持たなかった・・。その夜は、それだけ
で終わりました」

朝森の表情を読み取り、彼の陰茎の勃起状態をチェックして、朝森が敦子の話を不快に思ってい
ないことを確信したようで、敦子は妖艶な笑みを浮かべていました。そして、更に話を進めるこ
とにしたのです。

「三日目の夜、皆の絡みが終わり、誰もが全裸の体を布団に投げ出して、余韻を楽しんでいた時
だった。

駄菓子屋の男、鈴木さんが私たちの布団の側に来て、私を抱きたいと申し込んで来た・・。竹内
さんが私の意見を求めた。私は下を向いたまま、それでもはっきりと頷きました・・。それで決
まりました・・。

その瞬間、周りの人が口々に何やら声を出しながら、拍手をしてくれました。
私が鈴木さんを受け入れると表明したことを皆が喜んでくれたのです。
なんだか、恥ずかしい、変な感じでしたが、不快感はありませんでした」

実のところは、鈴木が代表選手になって敦子を抱く申し込みは仲間内で相談済みのことで、竹内
の内諾も得ていたのです。敦子一人が、事前の打診を受けていなかったのです。鈴木と竹内は勿
論、その場に居る全員が固唾を飲む心境で敦子の返事を待っていたのです。敦子が潔く頷いたこ
とで、期せずして仲間の皆から拍手が湧き上がったのです。

「鈴木さんは自分の連れである女、弘子さんを竹内さんに差し出しました。私から見ても、清楚
でかわいらしくて、50歳を超えた竹内さんに抱かせるのはかわいそうに思えた。きっと嫌がる
はずだと思ったのだけれど・・・」

敦子の心配は無用だったことをその直後、弘子の行動が教えました。

薄笑いを浮かべた全裸の弘子が竹内の側ににじり寄り、いきなり股間のモノを咥えこんだのです。
驚いたのは竹内と敦子で、その他の人達は弘子のことをよく知っているようで、ニヤニヤ笑って
みているだけでした。

弘子は竹内の股間に頭をうずめ、お尻を敦子に向け高く上げていますから、嫌でも彼女の女性の
部分が敦子の目に曝されていました。どうやら弘子は故意にその部分を敦子に曝しているような
のです。顔や姿からは想像できないほどいやらしい、野生的な性器が滴るほどに濡れているので
す。敦子はにがり切った表情でその部分から視線を外していました。

「やがて、竹内さんが弘子さんの両脚を肩に担いで、
あそこに唇をつけ、はげしく吸い始めた、
もう・・私のことは気にしていない様子だった・・・・。

私は、ひどい表情で二人を睨んでいたと思います。
女って・・、こんなとき往生際が悪いのだとつくづく思いました・・」

〈・・・敦子は、独占欲が強く、やきもち焼きだからね・・〉

笑みを浮かべた朝森が、頷きながら、内心でそうつぶやいていました。スワップやスイングの時、
朝森が他の女を抱いているのを見ると、敦子は露骨に嫌な表情を浮かべ、事が終わった後も何か
と朝森を責めるのです。それで、事情が許す限り、敦子の前では他の女を抱かないようにしてい
たのです。どうやら竹内も、敦子の焼もちで悩まされた様子です。(1)


[26] 一丁目一番地の管理人〈417〉  鶴岡次郎 :2012/06/11 (月) 15:46 ID:kuWFYj2M No.2244
2243(1)

「弘子さんに急かされて、竹内さん、弘子さんの上に乗っかってしまった。
直ぐに、弘子さんがわざとらしい、喘ぎ声を上げ始めた・・。

鈴木さんが後ろから私を抱きしめてくれた。
でも・・、私は・・・、竹内さんと弘子さんのことが気になって・・、
とても、鈴木さんを受け入れる準備が出来ていなかった・・・。

ところが・・・、
やさしく抱きしめられ、乳房を触られ、
首の周りをねちっこく舐められ・・、
私は、次第に解けて行った・・・

後で判ったことだけれど・・・
鈴木さんは、仲間の女性の間では評判の男だったの・・・。
見かけはごく普通の中年男なんだけれど・・、
元暴力団系の女性専科員だったと聞かされた・・・

彼の・・、鈴木さんの・・、指がアソコに入り込んだ、
その瞬間から・・、
私、竹内さんのことはどうでもよくなっていた・・、

彼の指と、何処まで行っても衰えない固い剛棒で翻弄されて・・、
私・・、みんなが注目している中で、乱れに乱れてしまった・・・、
最期には気絶してしまった・・」

ここで、言葉を切り敦子が朝森の様子を探っています。朝森の男根はその勢いを失っていません
でした。

「ゴメンナサイ・・・、
こんな生々しい話、建ちゃんにしてはいけないよね・・・
私・・、建ちゃんに甘え過ぎだと思う・・・、
聞きたくないようだったら、そう言って・・・。

エッ・・、良いの・・?、
本当に言いのネ・・?
ありがとう・・・・・」


たくさんの男女が見守る中で、元竿師に翻弄されている敦子を朝森は頭に描き出していました。
スワップや、スイングした時、敦子は複数の男達に抱かれた経験があり、それなりの反応を見せ
ていたのですが、朝森から見ても彼女が本気でセックスに溺れていると感じたことは一度もな
かったのです。

〈・・敦子は不感症気味ではないのか・・〉と、疑いの気持ちさえ何度も持ったことがあったの
です。

その敦子が、衆目の中で気絶したのです。四肢をだらしなく広げ、おそらく男の吐き出した精気
を股間から垂れ流しながら、敦子は気を失っていたのです。朝森は、自身の描き出した敦子の逝
き姿に感動して、思わず、洩らしていました。

そのことに気が付いた敦子が喜びをあらわにして、更に右手に力を込めて陰茎を握り締めている
のです。狙い通り、朝森が艶話に興奮しているのを察知して、敦子は全身が震えるほどの喜びを
感じていました。

もし、朝森が敦子の艶話に覚めた反応しか見せないのであれば、それはあらわになった敦子の本
性を朝森が嫌っていることを意味しており、これから先、とうてい彼と一緒の生活は続けられな
いと敦子は考えていたのです。インランで奔放な敦子の本性を朝森が受け入れてくれた・・。敦
子はそう感じ取って、新たな喜びを噛み締めていたのです。


[27] 一丁目一番地の管理人〈418〉  鶴岡次郎 :2012/06/12 (火) 15:56 ID:P4u/hepQ No.2245

「鈴木さんに翻弄されて、一時間以上狂いに狂うところを見られて、
結局、この女は見かけによらず好き者だと見破られて、
次の夜から、次々と男達から申し込みがあった。

20歳代の男から、60歳を越えるベテランまで、毎日違う男に預けられ、
結局、全員に抱かれ、翻弄された・・・」

ここで言葉を切り、朝森の反応を見ています。興奮していますが、朝森は不快な様子を見せてい
ません。

「こうして、短期間に、仲間の男達全員に抱かれた。
当然のことながら、竹内さんも、仲間の女全員を抱いていた・・。
比較的年齢の高い竹内さんにとっては大変だったと思う・・・
彼、密かに薬を飲んで、頑張り通した・・。

そうなると、仲間達の私達への対応が目に見えて変わってきた。
家族同然の付き合いが出来るようになった・・。

互いに相手を交換をするのは、
仲間の絆を強めるための儀式だとさえ思った・・」

露天商仲間全員とカラダの関係が出来たことで、竹内と敦子は仲間の一員として受け入れられ、
家族同様、いえ、ある意味では家族以上の深い絆で結ばれることになったのです。

「自然の流れで、私は他の女たち同様、相手が望めば、いつでも、仲間の男達を受け入れる女の
一人になっていた。勿論、竹内さんもそれを認めてくれていた」

旅先で一度抱かれると、その興行中は仲間内ではほぼ無条件に互いのパートナーを交換する習慣
があるのです。敦子達を含めた5組のカップルは毎日にように相手を交換して絡み会うようにな
りました。当然のことながら新人である敦子の人気は高くて、一晩に複数の男を相手にすること
も珍しいことではありませんでした。そして、男達に抱かれ、乱れに乱れる敦子を見て、竹内も
興奮して、男達の精液で塗れた敦子を抱きしめ、白々明けの朝まで絡み会うことが多かったので
す。昼間、屋台の店番をしながら、睡眠不足のつけが来て、船を漕ぐ竹内を仲間の男達が良く冷
やかしていたのです。

「その興行中、月の障りがある日以外、私はいつも男に抱かれていた。
精液の香りに包まれ、日毎に変わる男根をアソコにくわえたまま、
男の腕の中で、朝を迎えるのが習慣になっていた・・・」

「・・・・・」

あっけらかんと敦子は凄い話を朝森に告白しているのです。どうやら、全てを話すと決めた敦子
はある種の覚悟を固めているようです。スワップ経験者ですから並の男ほど驚きませんが、それ
でも朝森は、敦子の表情が意外に明るいのに気後れして、次の言葉を出せないのです。それでも、
彼の男根は極限まで勃起した状態を保っていました。彼は喜んで敦子の説明を聞いているのです。

「ご存知のようにスワップや、売春でいろんな男に抱かれてきたけれど、
露天商仲間の男達との関係は、少し違っていた・・。

誰もが優しく抱いてくれた・・、
彼等の腕の中で、私はこの上なく幸せで、親しい気持ちになれた・・・。
昨日今日会った男と接していながら、
あなたや、竹内さんに抱かれているような気分になった・・。

なんと言ったら良いのだろう・・・、
浮気には違いないのだけれど、ある時から罪悪感をほとんど持たなくなっていた。
これって・・、本物のインランになった証か・・と、自分自身が少し恐くなった」

少し真面目な表情に戻り、敦子が自問するように呟いています。


[28] 一丁目一番地の管理人〈419〉  鶴岡次郎 :2012/06/13 (水) 15:29 ID:CU2Lzn7k No.2246
「以前は他の男に抱かれると、どこか構えるところがあって、身体や心の中に燃えきれない部分
が残っていた。それが、罪悪感であったり、自分に対する嫌悪感であったりしたけれど、いずれ
にしても、夢中でセックスに溺れきることがなかった・・。

私はセックスが好きでない性質(たち)だと、ある意味で、あきらめていた・・。それで、男に
抱かれても無理にセックスを楽しもうとしなかった。そんな私だから、きっと私を抱いた男も満
足していなかったと思う・・。

それが、仲間の男達に抱かれると、心からセックスを楽しむことが出来た。他の女が悶えている
と、それに負けないよう、自分も乱れようとする奇妙な競争意識さえ芽生えて、私は生まれては
じめて、セックスに溺れこんだ。そうなると、相手の男も燃えてきて、『すばらしい身体だ・・、
感度が抜群に良い・・、まさに名器だ・・』と、今まで聞いたことがない言葉で私を褒めてくれた。

女って単純だから、そんなに褒められると、私は名器の持主かもしれないと信じるようになり、
益々セックスに精進するようになった。そして、男達が喜ぶことなら、何でも貪欲に取り入れ、
実践するようになった」

「ラビア・ピアスはそのためだね・・」

「ハイ・・、ピアスに限らず、剃毛、ボディ・ペインテイング、膣収縮剤、強壮剤その他、仲間
の内でセックス増進に効果があると思われていることは何でも取り入れた。

ただ、不思議なことに、SMまがいの行為は仲間内では一切流行らなかった。ごく特殊な趣味を
持つ女以外、SM行為はそれがどんなものであれ、たとえ男達がどんなに喜んでも、女達はそこ
から快感を得ることが無いのです。男達は賢明にもその事実を良く知っていて、女達の嫌がるこ
とは決してしなかった」


冷静な表情を見せていますが、朝森は内心少なからず驚いていました。敦子が毎日のように複数
の男と乱交する環境で過ごしたいたことも驚きですが、敦子がそのことを嫌っていなくて、むし
ろ、その環境の中でセックスに目覚めたことを知ったのです。

そんな組織の中で生活すれば、どんな女でも変わるはずだと、敦子はどんなに変わったのだろう
と・・、朝森はあきらめが入り混じった、それでいて、心弾む、捉えようもなく高揚した奇妙な
気分に取り込まれていました。そして、その感情は朝森にとって、決して不愉快のなものではあ
りませんでした。

多分その高揚感が敦子の掌の中にある彼の陰茎を更に膨張させたのでしょう、敦子は朝森が何故
か興奮しているのを悟り、彼が淫らな話を受け入れ、喜んでいることを知ったのです。敦子は更
に話を続けることにしました。

「正直に申し上げます。多分、私は以前の私と全く違う女になったと思います。
極端な言葉を使えば、どんな男に抱かれても、その瞬間、私はその男にトコトン惚れて、
全てを忘れて悶える女になってしまったのです。

心と身体が、別々になってしまったのかもしれません・・、

あなたを心から愛しています。
それでも、他の男に抱かれたら、
その瞬間だけは、貴方を忘れて狂いだすと思います。

こんな私を・・、受け入れていただきますか・・?
こんな私だけれど、お側に置いていただけますか・・・?」

そう言って、あどけない表情で朝森を見つめているのです。その姿は朝森にとって、まさに天使
に見えました。胸を突き上げる感動を朝森は押え切ることが出来ませんでした。

〈敦子・・・、
お前の話を聞いていて、この上なく淫蕩な話を聞いていて、
自分でも驚くほど、お前を愛していることが判った・・・、
敦子の全てが好きだよ・・・・〉

両腕で敦子を抱きしめ、朝森は心中で敦子に呼びかけていました。その気持は敦子に十分に伝
わった様子です。敦子が涙を溢れさせて、彼の胸に頬をつけ、下から朝森を見上げていました。
朝森が唇を寄せました。敦子が瞼をゆっくり閉じました。二人の唇が優しく触れ合いました。敦
子は人形のようにしていました。二人の心が完全に溶け合った瞬間でした。(1)


[29] 一丁目一番地の管理人〈420〉  鶴岡次郎 :2012/06/14 (木) 11:51 ID:mlfujSkQ No.2247
2246(1)

しばらく唇を合わせていた二人が離れました。眩しそうに朝森を見つめる敦子に、男が微笑み、
口を開きました。

「中には、凄い男も居ただろう・・・」

「・・・・・・」

朝森の問いかけに直ぐには答えないで、敦子が悪戯っぽい表情を浮かべ、黙って朝森を見つめて
います。

「どうなんだ・・、黙っていないで教えろよ・・・、
凄い技の持ち主とか・・、
お前のアソコが裂けるほどの、モンスター・マラを持っている男も居ただろう・・、
ほら・・、なんて言うのだっけ・・、真珠を埋め込んだ人もいただろう・・」

「フフ・・・・、
聞きたい・・・?
居たよ・・、たくさん・・。

いいよ、全部話すよ・・、良い・・?
途中で気分が悪くなったら、そう言って、直ぐ止めるから・・」

これから先、露天商と暮らした淫らな経験談を夫に話す機会は今を逃すと、二度と来ない、この
際朝森に男達のことを話しておこう、敦子はそう思った様子です。夫、朝森の中に潜むM体質に
気づいたことも敦子の背中を押していました。

「片手ではとても指がかからないほど太い人とか、一度入ると引き出すのに一苦労するほどエラ
の張った人とか、中には、喉からそれが飛び出そうなほど長い人とかが居た。そんな人に抱かれ
ると、終わった後、揺れ戻しというのかしら、押し上げられた子宮が下がってきて、酷い痛みを
感じることになるの、それでも、懲りないで、私も含めて、女達は嬉々としてその長い竿を受け
入れていた。

貴方が言う真珠入りの男性器を、私達はイボイボ・チン子と呼んでいたけれど、現物を見るとそ
んな可愛い呼び方がとても似合わない、醜悪に近い様相を見せていた。初めてのイボイボチン子
と接した時、凄い姿をしていたから、かなり期待したのだけれど、私が鈍感なせいか、ほとんど
イボイボを感じなかった。見掛け倒しだった。

後で聞いたら、他の女の感想も私と同じだった。これは私の個人的意見だけれど、女のアソコは
イボイボを感じ取るほど敏感でないと思う。だから、かなり太いモノでも、慣れれば普通に感じ
るのだと思う。要するに男が思うほど、女のアソコは敏感でないのです。

サイズが標準でも、数時間硬度が衰えない人がいて、そんな人に抱かれると、何度も逝かされ、
最期には必ず気を失っていた。女達の評価はこの人が最高だった。

こんな風に、女にとってはここが天国に思えるほど、美味しい男が一杯いた・・。

ああ・・・、ゴメンナサイ・・・、
私・・、良い気になって、少しおしゃべりが過ぎました・・」

笑みを浮かべて聞いていますが、朝森も男です、なんとなくすねた気分になっていました。こん
な話題を取り上げなければよかったと少し後悔していたのです。朝森の感情をいち早く感じ取った
ようで、少し慌てた様子で、敦子が言葉を切りました。

「でもネ・・、私が言いたいことは、これから先が大切な部分なの、
気を悪くしないで、もう少し、聞いて下さい・・・」

敦子が頭を下げ、朝森が苦笑いをしながら頷いています。

「抱かれた男の魅力は・・、たとえそれが一時の浮気でも・・・、
女が良い男だと思う条件は、男の身体と技だけではないのよ・・・」

ここまで淫蕩な表情を浮かべて話していた敦子が、その淫らな笑みを鎮め、少し改まった調子で
話し始めました。

「私が会った組の男達の身体も、技も、それは紛れもなく一級品だった。
しかし、彼等の素晴らしさは、身体や、技だけではなかった。
何よりもすばらしかったのは、彼等の心だった。

私達、女のために男達は一生懸命尽くしてくれるのよ。遊び人の男が『・・美女は味が薄い・・』
と言うことがあるでしょう、それとおなじ意味で、凄い技や、凄い身体を持った男達はどうして
も、その魅力を鼻にかけ、女達を粗末に扱いがちだけれど、組の男達は違った。ただ、女に尽く
すことだけを考えてくれるの、心から女に尽くしてくれるのよ。

彼等のおかげで私はセックスの素晴らしさを全身に叩き込まれた。そして、セックスを楽しもう
と思うなら、その相手に、その瞬間はトコトン惚れぬくことが一番大切なことだと、実践を通じ
て彼らから教えられた。

だから、私・・、だいぶ変わったと思います・・・
身体の変化は勿論、気持の上でも随分と変わりました・・・」

真っ直ぐに朝森を見詰め敦子が説明しています。(1)


[30] 一丁目一番地の管理人〈421〉  鶴岡次郎 :2012/06/15 (金) 11:14 ID:kfA5WQT2 No.2248
2247(1)

これまで、これほど素直に男達との関係を朝森に話したことがありませんでした。それまでは、
朝森が認めた関係だったとはいえ、後ろめたさや、後悔の気持が敦子に覆いかぶさり、経験した
事実の半分も朝森に話したことがなかったのです。

今回は違いました。最初から敦子は全てを話すと決め、そうすることが二人の将来のためになる
と信じているのです。もし、朝森が敦子の話を聞いて、彼女を嫌いになるようであれば、それは
それでいたし方のないことで、それを事実と受け止め、次の成長への糧にして、修正すべき点は
修正し、改める所は改め、朝森との新しい人生を切り拓きたいと、敦子は前を向いて、覚悟を固
めていたのです。

半年あまりの露天商たちとの生活経験を通じて、敦子は彼等の生き方から多くを学びました。そ
の結果、好きな人には彼女のありのままを曝すべきだと敦子は考えるようになったのです。恥ず
かしい経験も、人並み外れた情欲も、そのすべてを夫に曝し、その上で敦子を受け入れて欲しい、
もし、朝森が嫌うようなら、何処が嫌いなのか、そのことを詳しく分析し、出来る限り、朝森好
みの女になるよう努力すると、敦子はけなげな覚悟を固めていたのです。

こうした気持ちを持つようになった背景には、この半年間の生き方を敦子は恥じていない事実が
あったのです。彼女は自身が大きく成長したことを実感していたのです。その気持が、その自信
が、彼女を強くしていたのです。

勿論、朝森も敏感に彼女の変化を察知していました。そして、結果として、全面的にその変化を
受け入れると決めていたのです。

「敦子・・・、
そこで勉強して、見事に成長したお前の全てを、僕に見せて欲しい・・・、

多分、狂うほど、やきもちを焼くことになるが、
それでも、敦子の本当の姿を見せて欲しい・・・」

「ハイ・・・・、そうさせてください・・、
私の全てを、あなたに見ていただきます・・。

でも・・、決して嫌いにならないで下さい・・。
あなただけを愛しているのですから・・・」

両手両脚で敦子が朝森に絡みつき、男の唇にぶら下がるようにして、激しく男の口を吸っていま
す。それからは、二人の間に会話は消え、ただ激しい息づかいが寝室に響いていました。


一年近い空白は敦子を大きく変えていました。以前は朝森の仕掛けに受身で応じることが多かった
のです。それが、朝森が途惑うほど敦子は積極的に仕掛けてきました。

自らネグリジェを脱ぎ捨て、男の身体から衣類を剥ぎ取り、ルージュの跡を残しながら、全身を
舐めまわすのです。唇から、首、乳首そして、男根を両手で握り、大きく口を開きそれを咥え込
んだのです。

両脚は毛深い男の太股を挟み込み、小刻みに腰を動かし、女陰を男の膝頭に押し付けているので
す。滴る愛液がシーツを濡らしていました。以前の敦子は決して進んで咥えることはしませんで
したし、男を喜ばせる意思を見せなかったのです。

今、竹内から、そして一流の業師たちから学んだ技を惜しみなく朝森に披露しているのです。朝
森は沸きあがる悦楽に身体を委ね、ただ感嘆していました。

挿入も女が主導して行いました。朝森の身体の上に乗り、大きく開いた両脚の間に男の身体を収
め、敦子は巧みに右指を動かせて挿入を果たしました。

女は上体を仰け反らせて、悲鳴を上げていました。明らかに以前とは異なる、かって経験したこ
とがない強い締め付けを朝森は感じ取っていました。そして、その快感の中で、敦子をここまで
育て上げた男達の影を朝森ははっきりと読み取っていました。それは、屈辱的な感覚であるはず
のものでしたが、今の朝森には快感を更に盛り上げる役目を果たしていました。

〈・・・竹内さん・・・・、そして、会ったことがない皆さん・・・、
敦子をよくもここまで育てていただきました。お礼申し上げます。
あなた方が育て上げた敦子を、大切にします・・〉 

朝森は心中でそう呟き、その直後、めくるめく快感の中に身を投げ出していました。同時に女も
悲鳴を上げて男の身体の上に倒れこんでいました。


[31] 新スレを立てます  鶴岡次郎 :2012/06/16 (土) 14:08 ID:jmbiKYhs No.2249
新しい章へ移ります。 ジロー


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